流産手術の概要・費用

流産とは

流産とは、妊娠中に胎児が母体外へ排出されることを指します。
医学的には、妊娠22週未満で起こった場合を流産と定義しています。

妊娠12週までの流産を早期流産、妊娠12週~21週の流産を後期流産と言います。
流産のほとんどが妊娠12週までの早期流産です。

流産の原因

主な流産の原因としては、以下の要因が挙げられます。

  • 染色体異常
  • 母体の年齢が高い場合
  • 子宮奇形や子宮内膜症など、母体側の因子
  • 子宮内感染症
  • 円錐切除術の既往
  • 喫煙や飲酒、ストレスなど環境因子

流産の種類

化学流産

まだ胎嚢が確認される前の流産です。
いつもより生理がだいぶ遅れて来た場合には化学流産の可能性もあります。

定義的には流産にはカウントされません。

稽留流産

胎児が子宮内で死亡したにもかかわらず、子宮外に排出されない状態のことを指します。

切迫流産

切迫流産とは、妊娠21週未満において、流産の前駆けとなる症状が現れた状態を指します。主な症状は以下の通りです。

生理痛様の腹痛、性器出血や子宮頸管の短縮などの症状が現れます。

これらの症状があれば、完全流産に至る可能性が高くなります

不全流産

胎児が死亡し、一部分が排出されたが、胎盤や残りの胎児組織が子宮内に留まっている状態のことを指します。

不全流産では胎児の組織がまだ子宮内に残存していることから、手術が必要な場合もあります。

完全流産

妊娠22週未満で胎児とすべての胎盤組織が子宮外に完全に排出された状態を指します。

完全流産の主な症状は、血塊、膜様物の排出、子宮収縮に伴う陣痛様の腹痛があります。

出血して、組織が排出されると症状が徐々に和らぎます。

反復流産

2回以上の自然流産を経験することを指します。

習慣流産

3回以上連続して自然流産を繰り返す状態を指します。

流産手術とは

流産手術とは、自然に流産が進まない場合に、医療機関で外科的処置を行って、子宮内の胎児の組織などを取り除く手術のことです。

主な流産手術の種類には、以下のようなものがあります。

吸引手術

子宮頸部を少し拡張し、吸引器具を用いて胎児や胎盤を吸引除去する低侵襲の手術です。
痛みに弱い方は静脈麻酔を使用しますが、局所麻酔でも行うことができます。

当院ではこちらの手術方法で流産手術を行います。

子宮内容除去術(D&C)

最も一般的な流産手術です。
腟から鈍匙(キュレット)を子宮内に入れ、胎児や胎盤を掻把して取り除きます。
静脈麻酔を使用します。

いずれの方法も、残存した組織を完全に取り除き、大量出血や感染のリスクを低減することが目的です。
症状の程度や妊娠週数などから、最適な術式が選択されます。

当院で行える流産手術

当院ではMVA(Manual Vacuum Aspiration):手動吸引法で流産手術を行っています。
MVAとは、流産時に子宮内の内容物を吸引して除去する手術方法です。

具体的な手順は以下の通りです。

  1. 局所麻酔または全身麻酔を行います。
  2. プラスチック製の子宮頸管拡張器で子宮口を広げます。
  3. 特殊なプラスチックチューブを子宮腔内に挿入します。
  4. チューブに備え付けられている吸引器で、子宮内の組織片や残留物を吸引除去します。
  5. 出血量が少なく、子宮内が空になったことを確認します。

MVAは一般に、以下のような特徴があります

  • 外科的処置が最小限で済みます。
  • 入院の必要がなく、日帰りで可能です。
  • 合併症が少ないとされています。

しかし、手技が不適切だと子宮穿孔や過度の出血などのリスクもあり、経験を持つ医師が行う必要があります。
流産のタイミングによっても週数が大きいと適さない場合もあります。

MVAは、医学的に問題のない初期流産の場合に行われる一般的な低侵襲手術です。
安全性が高く、回復が早いメリットがあります。

流産手術のメリットデメリット

流産手術には以下のようなメリット、デメリットがあります。

メリット

完全に流産を終えられる

自然流産で胎児の組織が残ることがあり、追加で処置が必要になる可能性がありますが、手術なら確実に子宮内を空にできます。

自然流産よりも出血量が抑えられる

自然流産は多量の出血をするリスクがありますが、手術なら出血量をコントロールできます。

精神的負担が軽くなる可能性がある

自然に流産を待つ期間が長びくと精神的苦痛が大きくなります。手術なら早期に決着がつきます。

次の妊娠のスケジュールが立てやすい

自然流産を待つ場合には、時間がかかる場合もあるため、次の妊娠可能時期の見込みがわかりづらいです。

デメリット

麻酔や手術そのものにリスクがある

全身麻酔や子宮内の操作には、出血や感染、穿孔のリスクが伴います。

入院が必要なこともある

クリニックでは日帰り手術が一般的ですが、総合病院などでは入院手術になります。そのため、入院手術の経済的負担、時間的負担が生じます。
入院手術の場合は1泊2日で、費用は約6万円です。
日帰り手術の場合は麻酔を使用した場合2-3時間で、費用は約30,000円です。

精神的ショックが大きくなる可能性がある

自然な流れをさえぎる形になるため、心理的につらさが残る可能性もあります。

子宮が癒着する可能性がある

まれに手術時に子宮内癒着が生じ、不妊の原因になるリスクがあります。

早期に決着をつけたい方には手術が適していますが、リスクを十分理解した上で選択する必要があります。

当院の日帰り流産手術の流れ

手術前検査と説明

まず初回の来院では医師との診察、手術前の説明、手術前の検査を行います。

検査内容

  • 超音波検査
  • 感染症を含む血液検査
  • 尿検査

他院で感染症を含めた血液検査と尿検査の結果を用紙でご持参いただいた場合には、検査が重複してしまうため当院での検査は省略いたします。

手術の前に流産手術(手動吸引法)について詳しく説明いたしますので、ご納得いただいた上での手術が可能です。

手術当日

手術の当日は、手術開始予定時刻の30分前にご来院いただきます。

当院での手術の予約可能時刻は、10時30分~14時30分となります。

お着換え、点滴などの準備を行い、手術室に移動し静脈麻酔を注入します。
手術時間は20分ほどで終了し、麻酔の効果が切れるまでゆっくり休んでいただきます。

目が覚め、意識がはっきりとしてから手術後の診察をいたします。
手術後の子宮内の様子を超音波検査で行い出血の有無を確認します。

経過が良好な場合に医師が帰宅可能と判断し、帰宅となります。

手術後の診察

日帰り手術の当日から2週間経過後に、当院での術後診察があります。

この受診では、手術後の子宮内の状態を超音波検査で確認します。
手術で取り出された組織の病理検査の結果を詳しくご説明させて頂きます。

術後の状態、病理検査に異常がない場合には流産手術に関しての通院は終了となります。

流産手術の注意点

流産手術は精神的にも身体的にも大きな負担がかかる出来事です。

主な注意点は以下の通りです。

十分な休息を取りましょう。
術後は軽度の腹痛や出血が続くことがあるため、身体に無理をせず十分に休息を取ることが重要です。

感染予防に気をつけましょう。
術後は感染リスクが高まるため、衛生面に気をつけ、異常な出血や発熱などの症状があれば早めに医療機関に相談しましょう。

精神的ケアが必要です。
流産は心理的ショックが大きいことが多いため、必要であればカウンセリングを受けたり、パートナーや家族の支えを得ることで精神的に乗り越えていくことが大切です。

一定期間避妊が必要です。
次の妊娠へ向けて 医師の指示に従い、妊娠の準備期間を確保することが推奨されます。
流産の原因を探り、必要に応じて検査を受けましょう。

流産は誰にでも起こりうる可能性のある出来事です。
気持ちに余裕を持ち、医療従事者や周りの人々の適切なサポートを受けながら、一歩一歩前に進んでいってください。

流産手術後の性行為

流産手術後の性行為については、以下のようなことに注意が必要です。

術後4~6週間は性行為を控えましょう。
手術直後は子宮口が開いた状態にあり、感染のリスクが高くなります。
医師から性行為の許可が出るまでは、性行為は避けましょう。

出血が続く間は避けましょう。
術後数週間は不規則な出血が続く場合があります。
出血がある間は性行為を控え、出血が止まってから再開するよう指導されます。

避妊が必要です。
流産手術後すぐに再度妊娠する可能性がありますので、妊娠を避けたい場合には避妊をする必要があります。
ピルによる避妊やコンドームなどの避妊の方法を、パートナーと相談しましょう。

痛みに注意しましょう。
術後は一時的に性行為が痛みを伴う可能性があります。
無理せず、痛みがなくなってから再開するよう心がけましょう。

流産は大きな精神的ストレスを伴います。
カップルでゆっくり体調を整え、体と心の準備ができてから性生活を再開するのが賢明です。

中絶手術と流産手術の違い

中絶手術と流産手術には以下のような違いがあります。

中絶手術

意図的に妊娠を人工的に中止させる手術になります。
母体保護法による厳格な条件の元で行われます。

産婦人科の中でも母体保護法指定医が中絶手術を行うことができます。
妊娠22週未満に行われます。

手術方法は子宮内容除去術、分娩誘発など、妊娠週数に応じて最適な方法で行われます。

中絶手術は保険適用外となるため、全額自費でのお支払いとなります。

流産手術

一方、流産手術は保険適用のためお支払いは基本3割となります。

自然に流産が進行しない場合や手術を希望する場合に、子宮内に残った胎児や胎盤を取り除く手術を行います。
稽留流産や不全流産など、子宮内に胎児の組織が残っている流産が対象になります。

手術方法は中絶手術と同様の内膜掻爬術、吸引法、陣痛誘発などが妊娠週数により選択されます。

 

中絶手術は望まない妊娠を意図的に中止させる選択であり、流産手術は自然流産が完了しない場合の対処法という違いがあります。

いずれも女性の健康リスクを最小限に抑えることが目的ですが、中絶には倫理的な問題も伴うため、より慎重な配慮が求められます。

一方の流産手術は、望まぬ事態(出血、腹痛、感染など)への対処として受け入れられやすい面があります。

検査と治療にかかる費用の目安

内容 料金
初診料 890円
再診料 380円
超音波検査 1,600円
流産手術(MVA法) 30,000円
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