ミレーナ(避妊リング)とは
黄体ホルモンである「レボノルゲストレル」が添加されている避妊リングです。
子宮の中へ入れると、持続的にホルモンが出てきます。
この働きにより高い避妊効果と、挿入後の5年間にわたる避妊効果を得ることができます。
また「生理痛が重い」「生理の量が多い」といった症状の緩和にも有効です。ピルと違って、毎日飲み続ける手間もかかりません。
レボノルゲストレルの作用により子宮内膜が薄くなり、20%~40%のかたは生理がこなくなります。
ミレーナは生理の初日〜7日目までの間に挿入します。生理の量が多い方はミレーナが脱落してしまう危険性もあるので、生理の後半に挿入します。
ミレーナの効果
生理痛の症状緩和、生理の出血量の減少に効果があります。
体内に入れると最長5年間、効果を発揮し続けてくれます。また、その効果の高さは、ピルよりも高いと言われています。
また、ミレーナの成分は子宮内膜だけに働きかけるので、全身に影響を与えることはありません。
そのため吐き気・血栓症などの副作用も起こりません。
月経困難症や過多月経だけでなく、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症による重い生理痛にも有効です。
体内に入れると子宮内膜の増殖が抑えられるので、子宮内膜が薄くなります。
この効果により経血量が減り、生理の期間も楽に過ごせます。
ミレーナとピルの違い
- ピルと比べて避妊失敗率が低い
- ピルと比べて副作用が少ない
- 血栓症などのリスクがない
- 毎日薬を飲む必要がない
- 40歳以上の方・ピルが飲めない方・喫煙する方・片頭痛のある方でも使用可能
- ピルの副作用が重かった方にも使用可能
- 長い目で見るとピルより低コスト
メリット
生理の出血量の減少
黄体ホルモンが出続けるので、子宮内膜の増殖が抑制され、生理の出血量も減少できます。
生理の回数の減少
生理の回数も減るので、楽に生理期間を過ごすことができます。
20%~40%の確率で生理が来なくなるのですが、「生理が来ない=妊娠した、閉経した」というわけではありません。
避妊の効果
100%ではありませんが、高い避妊効果があります。
抜去すれば妊娠可能
妊娠を希望する際は、ミレーナを抜去すると妊娠できる状態に戻ります。
デメリット
- 腹痛や出血がある
- 月経周期が変動する
- 経血が出る期間が延びる
- 重篤な副作用の可能性(挿入時の子宮の穿孔(小さな穴があくこと)、卵巣のう腫茎捻転、骨盤内炎症疾患(PID)、異所性妊娠(子宮外妊娠))
使用をおすすめする方
- 生理痛が重い方(月経困難症)
- 生理の出血の量が多い方(過多月経)
- 妊娠を希望されない方
- 次の出産まで期間を設けたい方
- 子宮腺筋症や単純型子宮内膜増殖症の診断を受けた方
- 経膣分娩の経験がある方
- ピルの内服を忘れがちになってしまう方
- 特に、子宮腺筋症の治療に有効だと言われています
使用をおすすめできない方
- 乳がんの治療中、乳がんの既往歴がある
- 子宮口の拡張によって強い痛み・徐脈を起こしたことがある
- 重篤な肝障害・肝腫瘍がある
- 子宮腔の先天的異常が見られる
- 子宮の位置や方向に異常がある
- 現在妊娠中の方、もしくは妊娠している可能性がある
また、下記の方はすぐにミレーナの挿入ができない場合があります。
- ミレーナの成分に対して過敏に反応する方は、使用してから体調に異常がある場合には抜去することが可能です。
- 生理日以外でも性器からの出血が起こっている方は、出血の原因を精査して疾患がなければ可能です。
- 子宮内膜炎や卵管炎などの感染症がある方は、治癒してから可能です。
- 子宮頸管炎・膣炎を発症している方は、治癒してから可能です。
- 性感染症に感染している方は、陰性確認をしてから可能です。
ピルが飲めない方のミレーナ
- 40代以上でピルの服用経験のない方
- ピルを飲んだが副作用が出てしまった方
- 喫煙者
- 血栓症リスクが高い方
- 片頭痛をお持ちの方
- BMIが30以上の方
- 高血圧症の方
上記の方はピルを服用することができませんが、ミレーナの挿入が可能です。
保険と自費の違い
自費
避妊を目的とした挿入は自費となります。
ミレーナ挿入後の検診も自費の診療となります。
保険
生理の出血量が多い過多月経の方、生理痛の強い器質性月経困難症などの方で治療に用いる場合は、健康保険の対象となります。
検討が必要な疾患
子宮筋層厚が5cm以上の子宮腺筋症
月経困難症を解消させるためにミレーナを挿入する場合、子宮筋層厚が5cm以上あると効果が得られにくいと言われています。
そうでない方よりも脱出しやすくなるので、この場合は慎重にミレーナの使用を検討します。
2.5cm以上の子宮筋腫
2.5cm以上の子宮筋腫がある場合も、脱出しやすくなります。
筋腫が子宮内膜付近にできている場合は、不正出血が持続する可能性もあるので、脱出リスクも上昇します。
上記の理由もあるため、ミレーナを挿入する前には超音波検査を行います。
ミレーナの流れ
1ミレーナ挿入前の検査
性感染症に感染している場合は、ミレーナを挿入することができません。
初診時にミレーナについての説明と性感染症(淋病・クラミジア)の検査と超音波検査を行います。
2ミレーナ挿入
性感染症の陰性が確認できた場合に、ミレーナを挿入します。
性感染症が陽性の場合には治療を行い、陰性確認ができてからミレーナを挿入します。
生理期間中(生理開始後7日以内)に挿入します。
ミレーナの挿入時に痛みが生じることがあります。
痛みが苦手な方には局所麻酔を使用しますのでご希望の方はお申し付けください。
3挿入後の定期検診
ミレーナの脱出には要注意です。
「気付いたら脱出していた」とならないよう、定期的に検診を受け、正しい位置に付いているのかを調べましょう。
挿入から1カ月後・3カ月後・6カ月後・1年後に検診を行います。
それ以降は、1年に1回の頻度で行います。
装着してから1年経過するまでの期間の脱出率は、たったの1.5%だと報告されています。
後日現れる可能性がある症状
挿入数日後に現れる可能性がある症状
おりもの、不正出血、下腹部痛、腰痛
挿入後3~6カ月後に現れる可能性がある症状
生理時以外の少量出血
未破裂卵胞による卵巣の腫大
症状の内容は患者様によって違いますが、時間の経過と共に消失していきますのでご安心ください。
ミレーナの痛み
ミレーナの挿入は痛みが生じるのか不安な方も多いと思います。
全く痛みを感じなかったという方や、一瞬だけ痛みが生じる方、痛みというより違和感を感じたという方など、痛みには個人差があります。
不安な方は局所麻酔を使用することもできますが、局所麻酔の針を刺す時の痛みの方が強く感じる、または苦手に思う場合もあります。
多くの方は麻酔を使用せずミレーナを挿入しています。
痛みがどうしても苦手な方は静脈麻酔を使用し、挿入することもできます。
眠りながらのミレーナの挿入をご希望の方は、静脈麻酔は保険適用がないため、自費で20,000円頂きます。
検査と治療にかかる費用の目安
内容 | 料金 |
---|---|
初診料 | 890円 |
再診料 | 380円 |
ミレーナの挿入(保険) | 8,760円 |
ミレーナの抜去(保険) | 500円 |
よくある質問
ミレーナに保険と自費がありますが、違いはなんですか?
生理痛や生理の出血量の多い方は治療のために使用しますので、保険適用となります。
保険か自費か判断するために検査はしますか?
生理痛や出血量の多さは患者様のお申し出の確認となります。保険か自費かの判断のために検査はいたしません。
ミレーナを挿入する時は痛いですか?
挿入する時は痛みがある方が多いです。
ただ、入れた後に意外と痛くなかったと感じる方もいらっしゃいますので、やはり痛みの感じ方は個人差かと思います。
麻酔を使用して入れることはできますか?
局所麻酔をすぐに使用することができます。
ただ、局所麻酔を刺す針の痛みに弱い方にはあまりおすすめはできません。
静脈麻酔を使用することもできますが、手術ではないため保険適用がなく自費で別途40,000円かかります。
ミレーナを考えています。
初診で受診するタイミングはいつ頃がいいですか?
初診当日の挿入はできません。
淋菌・クラミジアの性感染症に感染していないことを確認してから挿入します。
そのため、初診時は生理中でない時期に受診をお願いいたします。