生理不順
生理に関する問題で婦人科を訪れる方は多く、特に若い女性にとって大きな影響を及ぼす可能性があります。
生理不順や無月経は、卵巣機能への悪影響や妊娠困難のリスクを高める可能性があります。
生理不順といっても、くるはずの生理が来ない、生理が終わったばかりなのにまた生理がきた、生理周期が長いなど様々なパターンがあります。
このページでは、様々なパターンと年齢別に生理不順について説明していきます。
通常の生理
月経周期は25~38日に一度が正常とされております。
受診に抵抗がある方へ
当院では、内診に抵抗がある方には、無理に内診を強制しません。
内診に抵抗がある旨をお伝えください。
また、排卵しているかどうかを確かめる場合は、基礎体温表も大切です。
基礎体温表は排卵か無排卵かを見極める手段のひとつにもなります。
排卵が確認できましたら、あまり深く悩む必要はありません。
ただし、排卵による体温の変化が見られない、またはその状態が3~6ヶ月続いているようでしたら、放置せずに当院へご相談ください。
年齢別の生理
10代の時期は初潮から数年間、生理不順が現れることもありますが、これは身体の成長と変化の一部です。
20代に入ると、多くの女性は月経の周期が安定します。
55歳頃に閉経を迎える前の約5年間は更年期と呼ばれ、女性ホルモンの分泌量が減少します。
20歳以下の場合
生理が3カ月以上来ていない20歳以下の女性は、注意が必要です。
生理が来ない原因はいくつか考えられます。
一つは妊娠です。
性行為の後に妊娠が成立すると生理は止まります。
そのため、妊娠のサインとして生理が来なくなるのです。
避妊をしていたつもりでも、性行為には妊娠のリスクが必ず伴います。
妊娠しているかの確認はドラッグストアで売っている妊娠検査薬で簡単にできますので、妊娠の可能性がある場合は、検査をしてみましょう。
もう一つは、過度なダイエットによるホルモンバランスの乱れです。
急激な体重減少や、食生活の乱れでも生理が来なくなる原因の一つです。
考えられる原因がなく、生理がこない場合には、産婦人科の受診をしましょう。
20~45歳の場合
20歳~45歳ころの女性は、普段から生理不順(月経不順)が続いていると、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)や子宮筋腫といった婦人科疾患の可能性が高まります。
PCOSや子宮筋腫などは、超音波検査でわかります。
45歳以上の場合
更年期障害や子宮筋腫などの婦人科疾患の可能性があります。
まず婦人科疾患の有無を確認し、異常がなければ更年期障害と考えられます。
更年期障害に対して、現在は様々な治療法がありますので、お気軽にご相談ください。
受診するタイミングとは
今回の生理のみ1週間遅れている
健康な方であれば大きな問題はないでしょう。
ストレスによりホルモンバランスに乱れが生じ、この25〜28日の周期に1週間程度の誤差が生じても、一時的であれば、問題ないと判断しております。
しかし、生理不順や月経の遅延を感じると、妊娠の可能性も考えられます。
その際は、ドラッグストア等で販売されている妊娠検査薬を使用し、確認をしてみましょう。
もし妊娠検査薬で陽性の結果が出た場合には、産婦人科を受診してください。
周期は不規則だが、3ヶ月以上は空かない
20歳以上で生理周期が不安定だと感じる方は、産婦人科の受診が必要になります。
一方、10代でまだ妊娠を希望していない場合は、生理不順も多少は自然なこととして、しばらくの間、状態を観察してみるのも一つの方法です。
生理が3ヶ月以上来ない
初潮から2~3年しか経過してない場合は、様子見で構いません。
ただし、全年代に共通して、生理不順や月経異常は無排卵のサインかもしれません。検査をしてみないと生理不順や月経異常はわかりません。
半年以上生理が来ない
生理が半年以上も来ない生理不順や月経異常は、女性ホルモンの分泌量の異常を示唆するかもしれません。
色々な疾患の可能性がありますので、このような状況に直面したら、必ず婦人科を受診してください。
ダイエットによって生理が来ない
過度なダイエットやトレーニングの影響で生理が止まる、生理不順に悩む女性は少なくありません。
急激な体重減少や、食生活の乱れでも生理が来なくなることがあるので、無理なダイエットは控えましょう。
婦人科の診察内容
産婦人科の診察において、基礎体温の情報は極めて大切なものです。
貴重なお時間が無駄にならないよう、スムーズな診察・診断を目指していますので、患者様にはできる限り、毎日基礎体温を記録していただくようお願いしています。
基礎体温が確認できると、排卵しているか否かの手掛かりになります。
また、血液検査の結果から、ホルモンの数値も把握できます。
超音波検査(エコー検査)では、卵巣と子宮内膜の状態をチェックできます。
内診に抵抗感がある方もいらっしゃるかもしれませんが、当院ではプライバシーに配慮し、照明を暗くしたり、カーテンで遮り医師と目が合わないようになっています。
女性看護師の同席にも配慮しておりますので、気軽にリラックスして受けていただければと思います。
生理不順で、かつ生理が長引いている、または出血量が多い場合は、子宮の疾患が隠れているかもしれません。
特に20代以降の方ですと、婦人科疾患の可能性も考えられるので、子宮がん健診などを定期的に受けられることを強く推奨しております。
無排卵周期症になると、子宮がんのリスクが上昇するので、薬物療法で治していく必要があります。
薬物療法では、生理を調整する薬を使用していきます。
多嚢胞性卵巣症候群などといった卵巣疾患がある場合は、不妊症のリスクが高くなるので、要注意です。
生理・排卵のしくみ
生理〜排卵前に子宮のなかでは子宮内膜が作られます。
排卵後は受精卵を受け入れるため子宮内膜を着床に向けて整えていきます。
生理とは、妊娠が成立しなかった時に子宮内膜が剥がれ落ち、それが経血として排出される現象です。このように、生理は妊娠する準備によって起こるものです。
これらの働きは脳によってコントロールされていて、その指令を元に、子宮や卵巣が動いています。
この働きのサイクルは、下記の通りです。
Step1
卵胞が成熟します。子宮では、子宮内膜を厚くするため、細胞を増殖しながら受精卵を受け入れようと準備しています。
Step2
成熟したひとつの卵胞が破れて、卵子が排卵されます。
Step3
子宮内膜は、受精卵が来るまで待ち続けます。
Step4
受精卵が来なかった場合、子宮内膜は剥がれ落ち、血液と一緒に身体の外へ出ていきます。
生理不順になる原因
10代 |
性機能が成長しきっていないので、無排卵になることもあります。 |
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妊娠期 | 妊娠すると生理は来なくなります。授乳期も生理が来ないことがよくあります。 |
更年期 | 女性ホルモンの分泌量が低下するため、生理不順・無月経状態になる傾向があります。 |
閉経後 | 50〜55歳頃になると、多くの女性は更年期を迎え、閉経になります。 |
PCOS
多嚢胞性卵巣症候群のことです。
生理不順の方によく見られる疾患です。
- 月経異常
- 超音波検査での多嚢胞卵巣を確認
- 血液中の男性ホルモンの上昇、または、黄体化ホルモンの高値かつ卵胞刺激ホルモンは正常値
の3つすべてを認める場合に多嚢胞性卵巣症候群と診断されます。
高プロラクチン血症
「プロラクチン」とは、赤ちゃんを産んだ後に分泌される、授乳に不可欠なホルモンです。
排卵を抑制する働きがあるので、生理不順や無月経が起こりやすくなります。
高プロラクチン血症とは、出産していないのにもかかわらずプロラクチンの分泌量が多くなる状態であり、ほぼ全ての症例に乳汁分泌がみられます。
月経不順や不妊症の20%程度に高プロラクチン血症が関係しているとのデータもあります。
治療にはプロラクチンの分泌を抑制するドーパミン作動薬を内服します。
脳腫瘍や乳腺疾患などが原因で高プロラクチン血症になる事もあります。
この場合には原因となる疾患を治療します。
胃薬や向精神薬などの内服でもプロラクチンの分泌を過剰に促すものもあります。
その場合には内服薬の中止が可能かを主治医と相談する必要があります。
甲状腺機能障害
甲状腺から出てくるホルモンの働きに異常が生じると、生理不順になります。
甲状腺機能障害は、生理不順以外の辛い症状も現れやすくなります。
例えば、疲労感を感じやすくなったり、めまいや冷え症、汗をかきやすくなったなどの更年期症状と類似した症状が出たりします。
当院では更年期症状がでている方には甲状腺ホルモンの検査も行っています。
採血により、甲状腺機能の異常がみられた場合には専門の病院にご紹介しています。
過度なダイエットや運動・ストレス・肥満
過激なダイエットやハードなトレーニング、ストレスによる生理不順・無月経は、若年層に多く見られます。
無排卵になり、そこからさらに悪化すると、女性ホルモンが分泌されなくなります。
規則正しい生活習慣、患者様に合った食事と運動、質の高い睡眠、適正体重の維持などを心がけておくと、排卵が回復しやすくなります。また、その改善・療法を受けていただくため、他の医療機関へ紹介することもあります。
生理不順になるリスク
女性ホルモン分泌ができていない場合
10~20代の女性にとって、正常に子宮を成長させるには、女性ホルモンの分泌は必要不可欠です。
また、女性ホルモンは、骨粗しょう症や脂質異常症のリスクを抑える働きも持っています。
そのため分泌量が減ると、骨折や心筋梗塞、脳梗塞などの発症リスクも高くなります。
さらに、子宮の萎縮も進むので、妊娠しにくい身体にもなってしまいます。
そのため女性ホルモンの分泌量が少ない場合は、ホルモン治療が必須です。
排卵ができていない場合
無排卵状態を放っておくと、将来妊娠しにくくなったり、がん化のリスクが高くなったりします。
また、生理不順によって大事なイベントと生理の日がかぶってしまうといった、トラブルも起こりやすくなります。
さらに、多嚢胞性卵巣症候群を発症している可能性も考えられます。
治療法
妊娠したい場合は、排卵誘発薬を処方していきます。
妊娠を考えていない患者様には、低用量のホルモン剤を用いて、がんリスクを抑えていきます。
連続で服用できるホルモン剤を使用すると大事なイベントと生理日がかぶらずに済みますので、生理周期がコントロールしやすくなります。
基礎体温の記録
婦人科の診察において、排卵の有無が確かめられる基礎体温表の記録はかなり大切です。
ご自身の身体の状態をチェックする上でも不可欠なものです。
また、基礎体温を毎日測定・記録することは、妊娠を準備する上でも必須とされています。
毎日記録して、身体からの危険信号を見逃さずに受け取りましょう。
AMH
卵巣予備能とは、いま妊娠する機会がどの程度あるのかを評価する指標になります。
卵巣には卵胞という嚢胞状の構造があります。
そして、卵胞の中に卵子があります。
卵胞数は年齢とともに減少することがわかっています。
出生時には約200万個ある原始卵胞は思春期で5〜10万個、35歳を超えると減少率が加速して閉経時には0個になります。
検査と治療にかかる費用の目安
内容 | 料金 |
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初診料 | 890円 |
再診料 | 380円 |
超音波検査 | 1,600円 |
ホルモン採血 | 4,000円 |
AMH検査(自費) | 6,600円 |