子宮頸部レーザー蒸散術とは
子宮頸部異形成の部位に対しての治療方法です。
子宮頸部のアブレーション(蒸散や凝固)にはCO2レーザーや熱凝固が含まれます。
子宮頸部レーザー蒸散術にはいくつかの方法があります。
当院で行う手術
当院では4.0MHzラジオ波メスを使用して子宮頸部レーザ蒸散術や円錐切除術を行います。
子宮頸がんの前がん状態(子宮頸部異形成)の患者様に対して、「子宮頸部レーザー蒸散術(ラジオ波凝固)」を行っています。
高周波メスやラジオ波(RF)メスを使い、子宮頸部の表層上部を3~5mmの深さで焼いていく方法を取り入れています。
4.0MHzラジオ波メスは、ホクロや刺青の除去、眼瞼下垂、フェイスリフトなど形成外科領域で近年使用されることが多くなりました。
細胞の中の水分に対してラジオ波を高密度に集中させることで、過剰な発熱や熱による組織の変成を抑えて炭化による組織の損傷を最小限に抑えることができます。
旧来の高周波メスや電気メスに比べると、特殊な方法で高周波を整えて流す高周波ラジオ波メスは、組織に対してより少ない力で作用し、組織に負担をかけ過ぎない切開を可能にします。
さらに、レーザーがその強力な破壊エネルギーで組織を蒸散するのに対して、ラジオ波のエネルギーは細胞単位で、水分にのみ作用し、白く煮えるような凝固を可能にします。
たとえば、CO2レーザーを紙に照射すると焦げて穴があきますが、高周波ラジオ波は水分を含まない組織には作用しないため、熱を発生させることもなく、もちろん焦げることもありません。
「定期健診にて、1年以上子宮頸部異形成を指摘されている」「健診の結果を良くしたい」などのお悩みがありましたら、ぜひ当院へご相談ください。
ラジオ波凝固の手術方法
高周波ラジオ波における細やかさと組織へのダメージを軽減することにより高周波ラジオ波による手術が成立します。
子宮頸部レーザー蒸散術を、高周波ラジオ波を使って子宮頸部の病変組織を蒸散させる低侵襲な手術です。
具体的な手順は以下の通りです。
- 局所麻酔や他の手術時と同様の静脈麻酔を施す
- 桜井式腟鏡で子宮頸部を観察
- 高周波ラジオ波メスを病変部に照射し、組織を蒸散させて切除
- 止血が必要な場合は凝固モードで止血
適応症としては、主に中等度~高度異形成(CIN2-3)があげられます。
病変の広がりなどから、手術の方式を総合的に判断する必要があります。
手術後は経過観察が重要となります。
手術の適応
子宮頸部中等度異形成(CIN2)、高度異形成(CIN3)に適応があります。
子宮頸がん検診で指摘を受けた方の中には、子宮頸部円錐切除術を勧められた方もいるのではないでしょうか。
しかしこの方法は、数日間の入院期間を要する切除術ですし、手術によって妊娠中の早産のリスクも高くなってしまう問題点もあります。
子宮頸がんまで進んでいる可能性が低い場合は、まずはいったん、子宮頸部レーザー蒸散術を受けられることをお勧めします。
ラジオ波凝固のメリット
妊娠時のリスク
ラジオ波メスを病変部に当てて凝固焼灼させる(焼き飛ばす)治療法ですので、子宮頸管が短くなる心配もありません。
創部が小さく、切除範囲を最小限に抑えられます。
他の高周波メスや電気メス、CO2レーザーと比較すると組織損傷を最低限にすることが可能です。
妊娠時には切迫早産などのリスクも消失します。
入院不要
全身麻酔が不要のため、日帰りで手術を受けることが可能です。
治療を受けた90%以上の方は病変が消え、原因となったヒトパピローマウイルスも消失できたという報告もあります。
入院で行った場合の費用は、2泊3日で約70,000円です。
当院での日帰り手術の費用は、日帰りで約27,000円です。
術後回復が早い
子宮頸部レーザー蒸散術は他の手術に比べると手術後の回復が早く、日常制限の期間も短いです。
ラジオ波凝固のデメリット
正確な組織評価
病変組織を切除しないので、正確な組織評価ができません。
術前にCIN1・2と診断されても、円錐切除術を行うと実はそれ以上に悪い組織病変が出る事もあります。
病変を正確に評価する必要がある場合には円錐切除術をお勧めします。
術後の出血
術後、少量の出血や水っぽいおりものが出続けることもあります。
ただし、出血の量が多い場合には受診をお願いいたします。
熟練した術者が必要
病変が子宮頸管の奥にあると蒸散しきれないこともありますが、蒸散が不十分だと残存病変が生じる可能性があります。
手術の流れ
手術前検査と説明
まず初回の来院では医師との診察、手術前の説明、手術前の検査を行います。
検査内容
- 感染症を含む血液検査
- 尿検査
他院の血液検査と尿検査の結果を用紙でご持参いただいた場合には、検査が重複してしまうため当院での検査は省略いたします。
手術の前に蒸散術について詳しく説明いたしますので、ご納得いただいた上での手術が可能です。
手術当日
レーザー蒸散術の当日は、手術開始予定時刻の30分前にご来院いただきます。
必要な方は、妊娠検査を行います。
当院での手術の予約可能時刻は、基本的に10時30分~14時30分となります。
お着換え、点滴などの準備を行い、手術室に移動し静脈麻酔を注入します。
手術時間は15~20分ほどで終了し、麻酔の効果が切れるまでゆっくり休んでいただきます。
目が覚め、意識がはっきりとしてから手術後の診察をいたします。
手術後の子宮内膜の様子を超音波検査で行い、出血の有無を確認します。
経過が良好な場合に医師が帰宅可能と判断し、帰宅となります。
手術後の診察
日帰り手術の当日から2週間経過後に、当院での術後診察があります。
手術の創部を確認します。
手術後の日常生活と仕事
子宮頸部レーザー蒸散術後の生活と仕事については、以下のようなことに注意が必要です。
手術後1~2週間は安静に過ごして下さい。過度の運動や激しい活動は控えめにします。
この間は出血や腹痛がある可能性があります。
軽い事務作業であれば手術から再開できますが、体力を必要とする仕事は術後4-6週間は控えめにします。
手術後4~6週間
術後4-6週間は出血や水様性のおりものが分泌されます。
この期間は子宮口が完全に治癒するまで待つ必要があります。
術後1ヶ月程度は浴槽につかる入浴は避け、シャワー浴を心がけましょう。
重い物を持ち上げたり、激しい運動は避けましょう。
術後経過は個人差がありますので、主治医の指示に従い、無理のない範囲で徐々に活動を再開するようにしましょう。
発熱や激しい出血など異常が見られた場合は、すぐに医師に相談することが重要です。
手術後の性行為
手術後4~6週間は性行為を控えましょう。
性行為によって蒸散した傷に細菌が感染する恐れがあります。
また、創傷治癒過程での組織は容易に出血することがありますので、接触により出血の危険性があります。
手術後4~6週間経過し、出血がおさまり、医師から許可が出れば、徐々に性行為を再開して構いません。
ただし、初めの内は過激な性交渉は避け、痛みや出血がないか注意深く観察する必要があります。
完全に回復するまでには個人差がありますが、通常2~3ヶ月程度を目安にするのが無難です。
術後は感染予防の観点からもコンドームの使用が推奨されます。
異常が認められれば速やかに受診することが大切です。
十分な回復期間を置くことで、合併症のリスクを最小限に抑えることができます。
手術後の再発の可能性
子宮頸部病変に対するレーザー蒸散術の術後再発率については、以下のように報告されています。
子宮頸部軽度異形成(CIN1)の場合の再発率: 5-20%程度
子宮頸部中等度-高度異形成(CIN2-3)の場合の再発率: 10-30%程度
再発の可能性が高い理由としては、以下のものがあげられます。
- 病変のグレード(重症度)が高い
- 病変が広範囲にわたる
- 切除断端が陽性
術後の定期的な経過観察(細胞診、コルポスコピーなど)が重要です。
再発が疑われる場合は、再治療が必要となります。
レーザー蒸散術は低侵襲で合併症が少ない利点がありますが、一定の再発リスクがあることから、術後の経過観察が欠かせません。
症例に応じて円錐切除術など他の治療法を選択することもあります。
手術後の定期的な診察
子宮頸部レーザー蒸散術後の経過観察は非常に重要です。
以下のようなスケジュールで診察を受けることが一般的です。
術後1-2週間
- 術部の癒合状況を確認
- 出血や感染の有無を確認
術後4-6週間
- 術後の経過と症状について問診
- 細胞診検査、HPV検査を実施し、残存病変がないか確認
術後3-6ヶ月
- 細胞診と頸部コルポスコピー検査を実施
- 再発病変がないかを総合的に評価
その後は1年に1回程度
- 細胞診、HPV検査と必要に応じてコルポスコピーを実施
- 3年間は厳重に経過観察
再発のリスクがある場合は、さらに短い間隔(3-6ヶ月)で細胞診やコルポスコピーの検査を行います。
再発が認められた場合は、追加の治療(子宮頸部円錐切除術など)が必要になる可能性があります。
治療後の経過観察が不十分だと、進行癌に進展するリスクがあるため、医師の指示に従い、確実に定期検診を受けることが重要です。
検診を怠らず、早期発見・早期治療に努めることが大切です。
検査と治療にかかる費用の目安
内容 | 料金 |
---|---|
初診料 | 890円 |
再診料 | 380円 |
静脈麻酔 | 2,000円 |
子宮頸部レーザー蒸散術 | 15,000円 |