月経の不快感や痛みを緩和する方法として、従来は薬の服用が一般的でしたが、現在では「ミレーナ」という器具の利用が広く知られています。
ミレーナは女性の体内に挿入する専用の器具で、月経に悩んでいる方や避妊を希望している方にとっても、有益な選択肢です。
この記事では、ミレーナの特徴と低用量ピルとの違い、メリット・デメリットや費用について紹介します。
ミレーナを挿入したあとの受診目安やよくある質問も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
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ミレーナとは
ミレーナ®は、正式には「レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)」と呼ばれ、子宮内で避妊を行うシステムおよび子宮内避妊具の名称です。
ミレーナは子宮の中に器具を挿入し留めておくことで、避妊や過多月経の管理に役立つとされています。
月経を完全に止めるものではありませんが、通常よりも月経量を減らせるため、月経痛の軽減に役立つ方法です。
ミレーナにはレボノルゲストレルという黄体ホルモンが含まれており、5年間にわたり少しずつ放出され、子宮内膜が厚くなるのを抑制します。
一方で、挿入が難しいケースもあります。たとえば、子宮筋腫などで子宮内部に変化がある方や、経腟分娩を経験していない未産婦の方です。
未産婦の場合は頸管が狭いため挿入に困難をきたすことがあり、病院によっては推奨されない可能性もあります。
どうしても挿入を希望する場合は、主治医とよく話し合ってください。
ミレーナの効果
ミレーナには低用量ピルのように避妊に役立つとされており、月経痛の緩和が期待できます。
それぞれの効果についてみていきましょう。
避妊
ミレーナは子宮内に挿入する避妊具で、黄体ホルモンを放出し、排卵を抑制するとともに子宮内膜を薄くします。
さらに、精子が卵子に到達するのを防ぎ、避妊に役立つとされています。
月経血量の減少
ミレーナは、月経量の改善が期待できるといわれています。
ホルモンの作用により子宮内膜が薄くなり、月経量が減少します。挿入した人のおよそ20%で、1年後に生理がとまると言われています。
月経痛の緩和
ミレーナは、月経痛の緩和が期待できるといわれています。
ホルモンの作用により子宮内膜が薄くなり、月経量が減少します。これによって、月経痛や不正出血が軽減されることがあります。
ミレーナと低用量ピルの違い
ミレーナと低用量ピルはどちらも避妊方法ですが、作用機序と使用方法に違いがあります。
ミレーナの特徴
ミレーナは子宮内に挿入されるインプラントタイプの避妊器具で、黄体ホルモンであるレボノルゲストレルを放出します。
このホルモンは、子宮内膜を薄くし、精子の移動を妨げることで避妊効果を発揮します。
また、月経痛の緩和や更年期障害の治療にも使用されます。
一度装着すれば5年間効果が持続し、その間は薬を服用する必要がありません。
低用量ピルの特徴
低用量ピルは、女性ホルモン・エストロゲンとプロゲステロンを含む経口避妊薬です。
これらのホルモンは排卵を抑制し、子宮内膜を変化させることで避妊効果を発揮します。
低用量ピルには月経周期を調整し、月経痛を緩和する効果もあります。
ただし、毎日決まった時間に服用する必要があり、飲み忘れると避妊効果が減少します。
ミレーナは長期間効果が持続し、一度挿入すれば手間がかからない一方、低用量ピルは毎日の服用が必要ですが、自分で管理できる利点があります。
どちらが適しているかは、ライフスタイルや健康状態によって異なるため、医師と相談して決めることが重要です。
ミレーナを挿入するメリット
ミレーナを挿入するメリットは次のとおりです。
【メリット】
- 薬の飲み忘れがない
- 効果が体内で持続する
- 避妊に役立つ
- 月経の負担を軽減できる
同じ効果を得るために薬を服用するときは、飲み忘れの問題があります。
しかし、ミレーナを挿入しておけば数年間は常に黄体ホルモンが放出され、月経の負担軽減や避妊効果が持続します。
スケジュールやその他の都合で服薬管理や通院ができない場合は、薬よりも手間を軽減できる可能性があります。
ミレーナを挿入するデメリット
ミレーナを挿入するデメリットは次のとおりです。
【デメリット】
- 挿入・抜去時の痛みがある
- 性感染症のリスクがある方や未産婦には不向き
- 5年ごとの交換が必要
- その他のトラブルにも注意
ミレーナは、子宮口がスムーズに開く方に適した治療です。
経腟分娩を経験していない方にはやや不向きであり、挿入や抜去の際に痛みを感じる可能性があります。
効果は最大で5年間持続しますが、脱落やずれが発生した際には挿入のし直しや交換をしなければなりません。
一部では子宮外妊娠のリスクが報告されています。
また、その他の副作用として不正出血や腹痛が生じる可能性があります。
使用中は定期的な健診を受け、異常を感じた場合は医師に相談してください。
ミレーナの費用
ミレーナは基本的に保険適用外の治療となりますが、月経過多・月経困難症の場合は保険が適用されます。
避妊だけを目的とする場合は自費診療になります。
自費診療にかかる費用の目安は次のとおりです。
項目 |
費用の目安 |
本体価格 |
約30,000〜50,000円 |
挿入費用 |
約10,000〜30,000円 |
診察代 |
約3,000〜5,000円 |
検査代 |
約5,000〜15,000円 |
定期検査代 |
約2,000〜3,000円 |
抜去費用 |
約10,000円 |
※上記の費用は目安です。
上記は自費診療の目安で、ミレーナの本体価格は医療機関によって異なります。
また、保険適用の場合は上記の目安のうち、健康保険の負担割合に応じた金額を支払います。
挿入後の受診目安
ミレーナを挿入してからは、定期的に婦人科を受診し、ミレーナの位置や不正出血の有無(ある場合は頻度や程度)、子宮内にトラブルがないかを確認します。
受診の頻度には個人差がありますが、装着後1ヶ月目はすべての人が受診し、その後1ヶ月間隔または2ヶ月おきに受診するケースが一般的です。
問題がなければ、受診間隔は1年に1回程度まで延ばせます。
ただし、不正出血や痛みがある場合は、頻度に関係なくかかりつけの病院を受診してください。
ミレーナに関するよくある質問
次に、ミレーナに関するよくある質問をみていきましょう。
挿入時の痛み・ニオイ、ミレーナを挿入したことで太るのかといったポイントをみていきましょう。
挿入の際に痛みはありますか?
ミレーナの挿入時は、ミレーナを安全に子宮内に留めるために、子宮口を開く処置が必要になります。
そのため、子宮口が狭い方は軽度の痛みや不快感を伴うことがあります。
子宮内避妊具の経験がない方・子宮筋腫や子宮内膜のトラブルがある方・子宮頸管が狭い方も同様です。
ニオイが気になるって本当?
ミレーナの挿入によっておりものが増えたり、不正出血によってニオイが気になったりするケースが報告されています。
ただし、すべての人に同じ症状が現れるわけではありません。
ミレーナを装着する前からニオイが気になっている方は、装着前に一度かかりつけの医師に相談してください。
また、装着後に明らかにニオイが強くなった場合は、感染症や不正出血の可能性を考慮し、医師に相談してください。
ミレーナで太ることはありますか?
製品に含まれている黄体ホルモンは微量であり、子宮内部にのみ留まって影響するため、すぐに体重が増加する心配はありません。
バイエル薬品株式会社が公開しているQ&Aでは、体重への影響はほとんどないとされています。
ただし、むくみや下肢の痛みが現れた場合は、すぐに病院を受診してください。(※)
※参照元:バイエル薬品株式会社「ミレーナ52mg Q&A」
ミレーナ挿入後に性行為をしても大丈夫ですか?
ミレーナを挿入しても、基本的に性行為には影響しませんが、子宮口の除去糸に陰茎が触れて違和感や痛みを覚えることがある場合は、正しい位置に器具が留まっていない可能性があります。
その場合、避妊効果も低減している状態のため、性行為を控え、かかりつけ医の診察を受けてください。
ミレーナ挿入後に妊娠したい場合はどうすればいいですか?
ミレーナを挿入後、妊娠を希望する場合は、器具を抜去する必要があります。
医師が挿入位置を確認し、正しい方法で取り出すため、自分で取り出さないよう注意してください。
自然に脱落してしまった場合は抜去の必要はありませんが、確認のため医師の診察を受けてください。
ミレーナを希望する場合はメリットや注意点をチェック
今回は、ミレーナの特長と低用量ピルとの違い、メリット・デメリットや費用を紹介しました。
避妊の選択肢の一つで、月経痛の緩和も期待できるミレーナは、利用者の出産経験や体の状況によっては挿入に適さない場合があります。
子宮内に装着する器具のため、装着後は1ヶ月〜1年の間隔で、定期的な検査や診断が必要です。
装着を希望する方は、事前に医師の診察を受け、痛みや副作用について相談し、治療方針を決めてください。
渋谷・原宿・明治神宮前・表参道の婦人科・産婦人科 - LOG原宿
監修者
院長
清水拓哉

経歴
- 杏林大学医学部卒業
- 筑波大学附属病院初期研修
- けいゆう病院後期研修
- 横浜総合病院などで勤務した後に開業
資格
- 日本産婦人科学会専門医
- 産婦人科内視鏡技術認定医
所属学会
- 日本産婦人科学会
- 日本産婦人科内視鏡学会
- 日本子宮鏡研究会
手術実績(通算)
- 腹腔鏡手術・700件以上
- 開腹手術・150件以上
- 帝王切開・300件以上
- 分娩(経腟分娩)・1000件以上