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LSILと診断されてから性行為をしても大丈夫?

子宮頸がんは、性行為によってハイリスクHPVと呼ばれるHPVウイルス(ヒトパピローマウイルス)に感染し、細胞が異型に変化していくことで発症する病気です。

HPVウイルスにかかってからすぐにがん化するわけではありませんが、持続感染と呼ばれる状態になるとがん化のリスクが高まるため、定期的に検診を受けて、早期発見・早期治療に取り組むことが大切です。

この記事では、子宮頸がんの原因とHPVが性行為の回数に関係しているのか、細胞診と呼ばれる検査の分類や「LSIL」の判定などについて紹介します。

子宮頸がんの原因

子宮頸がんは、子宮にできるがんのうち性行為が原因で発症する病気です。

HPVウイルスは性器接触で感染することが多い細菌で、ほとんどが性行為の後まもなく感染します。女性は若年層の罹患率が増加傾向にあるとされ、10代でも予防や注意が必要な病気です。(※)

HPVウイルスには100種類ほどの型が存在しますが、そのうち重篤な症状やがん化へと至るものは限られています。すべてのHPVウイルスががん化をもたらすものではありません。

近年では性行動の多様化によって、若年層だけではなく男性同士や子宮頸部以外へのHPVウイルス感染も報告されています。

※参照元:厚生労働省検疫所FORTH「ヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸がんワクチン (ファクトシート)」

性行為の頻度とHPVの関係

子宮頸がんはHPVウイルスによって引き起こされる病気ですが、性行為の頻度や回数に直接的な関係はありません。

厚生労働省によれば、子宮頸部に異常がみられない女性の10〜20%がHPVに感染しているとされ、若年層の発症割合が高いとされています。しかし、HPVをもたない場合は感染を起こす可能性は低くなります。性行為をして必ずHPVウイルスに罹患するわけではありません。(※)

※厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A

子宮頸がん細胞診の分類

子宮頸がんは、異常なしの状態から異形成が発生し、子宮頸がんへと進行していきます。細胞診の分類は次のとおりです。

検査結果

分類

推定される病理(診断)

陰性(異常なし)

NILM

非腫瘍性所見
炎症

意義不明な異型扁平上皮細胞

ASC-US

軽度扁平上皮内病変疑い

軽度扁平上皮内病変

LISL

HPV感染

CIN1

HSILを除外できない異型扁平上皮細胞

ASC-H

高度病変疑い

高度扁平上皮内病変

HSIL

CIN2

CIN3(高度異形成)・CIN3(上皮内癌)

扁平上皮癌

SCC

扁平上皮癌

陰性(異常なし)はNILMとして、細胞の異常はみられません。
症状が進行するとASC-USとなり、ASC-USから精密検査でHPVの感染状況を調べます。

関連記事:ASC-USとは?ASC-USの原因や子宮頸がんとの関連について

LSILとは?

LSILは、細胞診分類のうち「軽度扁平上皮内病変」と呼ばれる状態です。

扁平上皮という細胞の中に軽度な病変がみられ、「CIN1」「軽度異形成」とも呼ばれます。上皮細胞の3分の1以内に異形成があり、留まっている状態です。

HPVウイルスとの関係などを調べるために精密検査を受ける必要があります。

関連記事:LSILとは?LSILと言われたら?精密検査をする理由と癌の確率

HPVの型

HPVには、子宮頸がんのリスクが高い「ハイリスク型(ハイリスクHPV)」と、中間リスク型・低リスク型に分けられます。

100種類ある型のうち、悪性度分類は次のとおりです。

悪性度分類

HPV型

高リスク

16・1831333539455152565859687382

中間リスク

26・5366

低リスク

6・1140424344546170728189

ハイリスクHPVに感染している場合は、症状の進行度に合わせて治療や経過観察を行います。

国立感染症研究所「ヒトパピローマウイルス感染症

HPVの感染経路

HPVの感染経路は性行為ですが、キスなどの性行為以外の接触も含まれます。
基本的には性器接触によって感染し、皮膚や粘膜の傷口からウイルスが侵入することで感染します。

一部では母子感染による母親からの感染も含まれますが、大部分は性行為によるものです。また、湯船やプールへの入浴では感染しません。

子宮頸がんの検診後に注意すること

子宮頸がんの検診後に注意するポイントは、次のとおりです。

【注意するポイント】

  • 出血しているときは性行為を控える
  • 出血しているときは入浴やプールを避ける
  • 過度な運動や飲酒を控える
  • 出血が止まらないときは病院を受診する
  • 発熱や腹痛があれば病院を受診する

それぞれどのようなポイントに注意すべきなのか、詳しくみていきましょう。

出血しているときは性行為を控える

検査後に腟内から出血がある場合は、傷口が治癒するまで性行為を控えてください。

性器接触によって再出血が起きたり、細胞を採取した部位から新たに感染が起きたりする可能性があるため、数日は感染の原因となる接触を控えましょう。

膣内を清潔に保つ必要があるため、出血がない場合でも2,3日は安静に過ごすようにしてください。

出血しているときは入浴やプールを避ける

検診で細胞診などを受けた後は、採取した部分から出血することがあります。大きな傷ではありませんが、患部が塞がるまで数日は入浴を控え、シャワーのみにとどめて細菌が入らないように注意してください。

シャワーで体や髪を洗うことは問題ありませんが、膣内まできれいに洗う必要はありません。出血があって気になるからといって膣の奥まで洗浄しないように注意しましょう。

入浴だけではなく、温泉やプールも同様に2,3日は控えてください。出血がなくても検査当日はシャワーのみに限り、傷が癒えてから浴槽に浸かるようにしてください。

過度な運動や飲酒を控える

出血があるときは、過度な運動や飲酒も控えましょう。飲酒・運動はどちらも血流を促進するため、出血量が増える可能性があります。

病院によっては、検査の前後でこれらの活動を控えるように注意があります。注意をされない場合でも、体を激しく動かすような行動は控えて、無理に体を動かさず安静に過ごすことをおすすめします。

出血が止まらないときは病院を受診する

検診後、出血が止まらず持続したり、さらに出血量が増えたりした場合は、かかりつけの婦人科や産婦人科に相談してください。

出血の量は少なくても、腹部に激しい痛みが続くような場合も我慢せず、病院を受診して状況を伝えましょう。

一例として、細胞診を受けて頸部の細胞を採取し、生理1〜3日目程度の出血が続くようなケースでは、頸部のトラブルが考えられます。

発熱や腹痛があれば病院を受診する

検査によって腹痛や発熱が発生したときは、何らかのトラブルが考えられます。体調不良は放置せずに、早めに病院を受診しましょう。

検査直後に腹痛があるときは、そのまま病院で安静に過ごしながら痛みが収まるのを待ちます。それでも痛みが解消しなければ、主治医による診察が必要です。

痛みにはさまざまな症状が隠れていることがあります。すぐ治るからと我慢せず、かかりつけ医などの専門医に相談してください。

精密検査の後は性行為を控える

今回は、子宮頸がんの原因や分類、HPVウイルスの型や検査後の注意点について紹介しました。

異常がないと診断されても、継続的に性行為を行うことで新たなウイルスに罹患することがあるため、HPV感染による子宮頸がんの予防には、定期的に検査を受けることが大切です。

子宮頸部の検査では、検査後少量の出血がみられます。出血がない場合でも性行為や膣の洗浄は避け、出血量が多い・痛みがあるときはすぐに専門医を受診し、安静に過ごしてください。

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監修者

院長

清水拓哉

経歴

  • 杏林大学医学部卒業
  • 筑波大学附属病院初期研修
  • けいゆう病院後期研修
  • 横浜総合病院などで勤務した後に開業

資格

  • 日本産婦人科学会専門医
  • 産婦人科内視鏡技術認定医

所属学会

  • 日本産婦人科学会
  • 日本産婦人科内視鏡学会
  • 日本子宮鏡研究会

手術実績(通算)

  • 腹腔鏡手術・700件以上
  • 開腹手術・150件以上
  • 帝王切開・300件以上
  • 分娩(経腟分娩)・1000件以上
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