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HSIL(ハイシル)とは?結果後の検査や治療の方針について解説

子宮頸がん検診の結果でHSIL(ハイシル)と伝えられたものの、用語の意味がわからず、お困りの方もいらっしゃるかもしれません。
通常、HSILと診断されると精密検査を勧められますが、何もわからないまま検査を受けるのは不安ですよね。

そこで本記事では、HSILの意味と、HSILと診断されたあとの精密検査の内容や重要性を解説します。
HSILと診断後の治療方法も説明しますので、参考にしてください。

HSILとは?

HSILは、子宮頸がん検診を受けた結果が“高度扁平上皮内病変”であることを示す用語です。
子宮頚部の上皮で異型細胞が増殖している可能性があると、このように診断されます。
HSILは子宮頸がんのリスクが高まっているという結果でもあるため、早急に精密検査を受けなくてはなりません。

そもそも異型細胞とは、ウイルス感染によって、正常ではない形態になってしまった細胞のことを指します。
こうした細胞の形態変化が、異形成とよばれるものです。

子宮頚部の上皮で異形成が進むと、異型細胞が増殖するので、子宮頸部上皮内腫瘍が作られます。
これが、子宮頸がんの原因です。
子宮頸部上皮内腫瘍は、Cervical Intraepithelial Neoplasiaという英名の頭文字をとってCINと略されており、進行度によって3段階に分けられています。

子宮頸部上皮内腫瘍の進行度による分類

  • CIN1:軽度異形成
  • CIN2:中等度異形成
  • CIN3:高度異形成・上皮内がん

詳細は後述しますが、腫瘍がCIN3より進行すると子宮頸がんになります。
そのため、CIN3までの段階で治療を行うことが重要です。

なおHSILは、CIN2~3に相当すると思われるときに言い渡されます。
子宮頸がん検診ではCINの進行度まで判断するのは難しく、CINではない別の基準を使って結果が出されているので、HSILという用語が使われています。
進行度を正確に判断するには、精密検査を受けなければなりません。

HSILが子宮頚がんになる確率

HSILと診断された方のなかでも、特に症状が進んでいるCIN3に相当する場合、2年以内に子宮頸がんになる確率は30%程度だといわれています。
しかし、早期発見したうえで適切な治療を受ければ、完治が期待できます。

HSILと診断されたあとに受けるべき精密検査の内容や治療方法をより正しく把握するために、次項で説明する子宮頸がんの原因も踏まえておきましょう。

子宮頸がんの原因

子宮頸がんの原因は、性交渉によって感染するHPVというウイルスです。
HPV自体は珍しいウイルスではなく、性生活のある方であれば、生涯に一度は必ず感染するといわれています。

多くの場合は、子宮頚部の上皮細胞がHPVに感染したとしても、自然にウイルスが排除されて正常に戻ります。
しかし、例外的に感染が持続した場合、異形成が始まることがあるのです。
この異形成が進行して上皮の全層が異型細胞となると、さらに下にある間質まで異型細胞が入り込み、体内に転移するような子宮頸がんになってしまいます。

なお、異型細胞が上皮内に留まっているあいだは、体内に転移することはありません。
そのため、体内に異型細胞が入る前に取り除けるよう、早期発見したうえで適切な治療を施すことが大切です。

またHPVには100種類以上の型があり、がんのリスクが高いものとそうでないものがあるため、感染しているHPVの種類も加味して治療方針を決めていく必要があります。

子宮頚部異形成に初期症状はある?

前項では、がんのリスクを回避するために、異形成が上皮内でのみ起こっている段階で治療を行うべきだと解説しました。

しかし、子宮頚部異形成に自覚できる初期症状がみられることはほぼないので、早い段階で発見するためには定期的な検査が必要です。

とはいえ子宮頸がん検診だけでは、異形成の進行度を正確に判断するのは難しいでしょう。
なぜなら、この検診では、身体に備わっているときのように並んだ状態の細胞を観察する組織診までは基本的に行わないからです。

子宮頸がん検診で行われる一般的な検査は、身体からはがれ落ちた細胞をチェックする細胞診です。
これにより、HPV感染が原因で発生した異型細胞が見つかれば、異形成が起きているかは判断できます。
しかし、検査するのはすでに身体からはがれ落ちた細胞であるので、現在の身体に備わっている細胞の状態と必ず一致するとは限りません。
そのため、異形成が現状どこまで進行しているかを判別するには、子宮頸がん検診で得られる情報だけでは不十分なのです。

これらの理由から、子宮頸がん検診でHSILだと結果が伝えられたときには、細胞が並んだ状態で観察する組織診も行わなくてはなりません。

HSILの検査内容

HSILと診断された場合は、組織を診察するために精密検査が行われます。
具体的にどのような検査をするのか、見ていきましょう。

コルポスコピー検査

コルポスコピー検査は、顕微鏡の一種であるコルポスコープを使用して子宮頚部を拡大し、その表面を観察する検査です。
異形成が起こっている部位は通常の細胞と異なるため、コルポスコープで約6~40倍まで拡大したうえで、どの部分に病変が起こっているのか細かく確認していきます。

また、3%の酢酸溶液を塗布しての検査も行います。
こうすることで異常がみられる部分の組織が白く変色するので、さらに詳しく病変部を探ることができるのです。

生体検査

コルポスコピー検査によって異形成が生じていると疑われた部位が発見されたあとは、その組織を採取し、顕微鏡を使う病理検査に提出します。
結果が出るまでの期間は、1~2週間程度です。
こうした検査のことを、生体検査といいます。

より詳しく進行度を判別するには、生体検査によって、現在の組織の状態を確認することが重要です。

生体検査で組織を採取する際は多少の痛みがありますが、身体の表面に比べると膣内は鋭い痛みを感じにくい部分ですので、あまり心配する必要はないでしょう。

HSILの治療方針

精密検査を経て子宮頚部異形成の進行度が判明したら、進行度に合わせた治療が必要です。
HSILの治療方針は4種類ありますので、以下で詳しく解説します。

経過観察

子宮頚部異形成がCIN2と判断された場合は、自然に治る可能性があります。
そのためすぐには手術をせず、いったん定期的な検査で経過観察する方法が主流です。
細胞診を定期的に実施し、異形成の進行度を確認していきます。

なお、CIN3まで進行しやすい種類のHPVに感染していると判明した場合は、コルポスコピー検査も行われます。
なぜなら、リスクの高いHPVに感染していた場合は自然消失する確率が低いので、組織診も含めた経過観察を行わなくてはならないからです。
CIN2の段階で手術を急ぐ必要はありませんが、精密検査は欠かさず受けるようにしましょう。

子宮頸部円錐切除術

子宮頸部円錐切除術とは、病変が起こっている子宮頚部を、円錐型にメスで切除する手術のことを指します。
子宮頚部異形成がCIN3まで進行しているとわかったときは、この手術が行われるのが一般的です。
もちろんCIN2に該当しており、かつハイリスクHPVに感染している方の治療方法としても採用されることがあります。

また、コルポスコピー検査や生体検査で病変が見つけられず、はっきりとした診断が下されないときにも、子宮頸部円錐切除術が行われるケースがあります。
切除によって病変を確認することで、確実な診断が可能になるのです。

なお、子宮頸部円錐切除術は子宮を温存できるので、妊娠を希望されている方でも受けられます。
ただし、切除によって子宮頸管は短くなってしまいます。
子宮頸管が短くなると早産のリスクが高まるともいわれているため、妊娠を希望されている方は、こうした懸念点も認識しておかなくてはなりません。

子宮頸部蒸散術

子宮頚部異形成を取り除く手術には、病変部の組織をレーザーで焼いて消失させる、子宮頸部蒸散術という方法もあります。
子宮頚部円錐切除術とは異なり、子宮頚部を切除しないため、頸管が短くなることはありません。
そのため、妊娠に影響を及ぼす可能性が低いと考えられています。

また、子宮頸部蒸散術は施術時の出血が少ないうえ、局所麻酔で受けられる手術です。
日帰り治療が可能な病院も多く、治療の負担が少ないこともメリットの一つといえます。

ただし子宮頸部蒸散術は、CIN3まで進行している異形成に対しては、子宮頸部円錐切除術よりも治癒率が劣るといわれています。
適用条件も限られていますので、希望される方は医師とよくご相談ください。

子宮全摘手術

妊娠を望まない方は、子宮全摘手術も選択肢に加えられます。
子宮自体を摘出するので、子宮頚部異形成が再発することがなく、将来的に子宮頚がんになるリスクもなくなります。
そのため、摘出したあとは定期的に子宮頸がん検診を受ける必要もありません。

なお、子宮全摘手術には、腹部を切開することなく施術を終えられる手段もあります。
子宮全摘手術を選択する場合は、ご自身に合った摘出方法まで、医師に確認しておくと安心です。

HSILと診断されたら精密検査が必須

今回は、子宮頸がん検診におけるHSILという結果の意味と、精密検査の内容や治療方法を解説しました。

子宮頸がん検診のHSILという結果は、子宮頚部の異形成がCIN2~3に相当するおそれがあることを意味します。
しかし、この診断が下されたからといって、すぐに子宮頸がんを発症するわけではありません。
適切な治療を施せば完治が期待できる状態ですので、HSILと診断された際は、なるべく早く治療方針を決めるための精密検査を受けましょう。

Ladies clinic LOG 原宿でも、HSILであったときに受けるべき精密検査のご予約を承っております。
コルポスコピー検査であれば、当日のご予約も可能ですので「HSILという結果が出て心配」という方は、お気軽にお問い合わせください。

監修者

院長

清水拓哉

経歴

  • 杏林大学医学部卒業
  • 筑波大学附属病院初期研修
  • けいゆう病院後期研修
  • 横浜総合病院などで勤務した後に開業

資格

  • 日本産婦人科学会専門医
  • 産婦人科内視鏡技術認定医

所属学会

  • 日本産婦人科学会
  • 日本産婦人科内視鏡学会
  • 日本子宮鏡研究会

手術実績(通算)

  • 腹腔鏡手術・700件以上
  • 開腹手術・150件以上
  • 帝王切開・300件以上
  • 分娩(経腟分娩)・1000件以上
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