ホルモンバランスの乱れなどの理由によって、まれに子宮内膜ポリープができてしまうことがあります。
子宮内膜ポリープが見つかり、「妊娠できなくなってしまうのかな」「妊娠できても、赤ちゃんに何かあったらどうしよう」と不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。
本記事では、子宮内膜ポリープが妊娠に与える影響を、不妊症との関係とともにお伝えします。
新しい命を安心して迎えたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
子宮内膜ポリープとは?
子宮内膜ポリープとは、若い方から閉経前後の方まで幅広い年代の女性に発生しうる、子宮内膜にできる腫瘍のことです。
表面は滑らかで、根元に芯がある丸いキノコのような形状をしているのが特徴です。
大きさは、数mm~数cm程度とさまざまで、個数も1つだけできる場合もあれば複数発生することもあります。
子宮内膜ポリープが自然に取れることは基本的にないため、大きくなる前に摘出しなければなりません。
なお、ポリープを摘出後、悪性の有無を検査します。
子宮内膜ポリープのほとんどは良性であるものの、子宮体がんや子宮肉腫といった悪性の腫瘍の可能性もあるためです。
万が一、悪性だった場合は、進行の度合いに応じて手術や抗がん剤治療、放射線治療などを受けることになります。
子宮内膜ポリープが妊娠に与える影響
子宮内膜ポリープは、受精卵が着床する子宮内膜にできるので、妊娠への影響が気になるところですよね。
結論からいうと、子宮内膜ポリープの大きさや発生した位置によっては、受精卵の着床を妨げてしまうので、妊娠への影響が懸念されます。
ですから、自然妊娠、人工授精どちらであっても妊娠を希望される場合には、手術を受けてポリープを取り除いたほうがよいといわれています。
妊活に取り組んでいる過程で子宮内膜ポリープが発見された場合、それが妊娠に影響のある大きさや位置なのであれば、手術を先に受けてください。
子宮内膜の炎症や不正出血、着床不全などが解消されれば、着床率や妊娠率が高まるはずです。
子宮内膜ポリープがあっても妊娠・出産できるケース
子宮内膜ポリープは妊娠に影響を与えるおそれがあるとお伝えしましたが、ポリープが発生していても妊娠する可能性はあります。
具体的には、受精卵がたまたまポリープのない場所にうまく着床したケースなどが該当します。
この場合、子宮内膜ポリープの大きさや発生した位置次第ではあるものの、妊娠の経過に問題がなければ、手術を受けなくても無事に出産できるでしょう。
ただし、子宮内膜ポリープは不正出血や流産、早産のリスクを高めてしまう可能性があるのもまた事実です。
そのため、定期的な検診は欠かせません。
子宮内膜ポリープが見つかった場合は、前述の通り手術で取り除いたうえで妊活に取り組むことをおすすめします。
子宮内膜ポリープと不妊症の関係
ここまでの説明を受けて、「子宮内膜ポリープは、なかなか妊娠できないこととも関係しているのかな……」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その関係をうかがわせる数字やデータがあるので、以下でご紹介します。
日本受精着床学会によると、子宮内膜ポリープは一般女性の約10%に、不妊症の女性の24%に発生していることがわかりました。
また、亀田IVFクリニック幕張と東京医科歯科大学の臨床データもあります。
それによると、子宮内膜ポリープの切除手術を受けた36例のうち、切除後の妊娠率は44.4%と一定の治療効果が認められました。
一般的に、子宮内膜ポリープは1個だけできる単発性が多いのですが、不妊症の女性の場合、2個以上の多発性がよくみられます。
単発性と多発性のポリープを比較すると、治療後のそれぞれの妊娠率は25%と54.2%だと判明し、多発性ポリープの除去が妊娠率の向上に有意であることが証明されています。
これらのデータを踏まえると、特に多発性の子宮内膜ポリープがある場合は、不妊症の原因になっている可能性が高いため、手術を受けることで妊娠につながるかもしれません。
【参照元】
2020年日本受精着床学会雑誌「不妊症に対する子宮鏡下内膜ポリープ切除術の有用性」
亀田IVFクリニック幕張「不妊症に対する子宮内膜ポリープ切除術の有効性について」
子宮内膜ポリープの原因
正確な原因は現在のところ特定できていませんが、女性ホルモンであるエストロゲンの過剰分泌が、子宮内膜ポリープの発生に関与しているとされています。
基本的に、子宮内膜はエストロゲンの影響を受けて厚みを増し、生理の期間にはがれ落ちて経血とともに排出されます。
しかし、さまざまな原因によってホルモンバランスが乱れ、エストロゲンの影響が大きくなり過ぎると、子宮内膜の一部が異常に成長し、ポリープとして発現するのです。
さらに、子宮内膜に慢性的な炎症が起こると、その刺激によってポリープが発生するとも考えられています。
炎症を引き起こす要因として挙げられるのは、以下の項目です。
子宮内膜に炎症を起こす要因
- 加齢
- 高血圧
- 糖尿病
- 肥満
- 喫煙習慣
- 過度なストレス
- タモキシフェンの服用
エストロゲンの減少に直結する加齢だけでなく、生活習慣や過度なストレスなどの要因もホルモンバランスに影響を及ぼすため、子宮内膜の炎症に間接的に関わっています。
また、乳がんの治療に使用されるタモキシフェンには、エストロゲンに似た作用があるので、長期間服用を続けると炎症が起き、ポリープができる危険性が高まるといわれています。
子宮内膜ポリープの症状
子宮内膜ポリープができると、以下の症状がみられます。
【子宮内膜ポリープの疑いがある症状】
出血 |
・不正出血が続く ・生理の期間が長くなる ・経血量が増える ・閉経後に出血がみられる |
痛み |
・生理痛が強くなる ・性交時に強い痛みを感じる |
その他 |
・貧血が起こる ・目まいがする ・倦怠感がある ・下腹部に不快感や圧迫感がある ・頻尿になる |
これらの症状の程度は、子宮内膜ポリープの大きさやできた位置などによってさまざまですが、症状が軽くても生活の質を低下させてしまいます。
「夜用のナプキンでも経血が漏れてしまう」「生理痛がひどすぎて立ち上がれない」といった症状は、身体からのSOSサインかもしれません。
ご自身の身体の状態に向き合い、「もしかしたら……?」と少しでも違和感を覚えたら、できるだけ早く婦人科を受診しましょう。
子宮内膜ポリープの検査方法
ここでは、子宮内膜ポリープの検査のうち、代表的な3種類をお伝えします。
いずれの方法であっても痛みはあまりないため、検査にあたって麻酔は基本的に使用しません。
なお、子宮内膜ポリープが発見された場合、発生箇所によっては手術の必要があるため、できるだけ妊活を始める前に検査を受けてくださいね。
超音波検査
子宮内膜ポリープの検査でもっとも一般的に採用されているのが、超音波検査です。
膣内にプローブとよばれる細い棒を挿入し、それを動かしながらモニターにきれいに映る位置を探していきます。
プローブの先から出る超音波によって子宮内を詳細に検査し、子宮内膜ポリープがあればその場所を正確に突き止めることができます。
挿入時に少し違和感を覚えるかもしれませんが、痛みや出血が生じることは基本的にありません。
プローブには専用のカバーをつけるため、衛生面も安心です。
子宮鏡検査
膣内に外形の細い軟性鏡や硬性鏡を挿入する子宮鏡検査も、子宮内膜ポリープの検査方法として用いられます。
軟性鏡や硬性鏡についているカメラの映像をモニターに映し出して、子宮内膜ポリープの大きさや位置などを確かめることができます。
麻酔を使用しなければ、こうしたご自身の子宮内を検査している様子を見ることが可能です。
もし、痛みが心配であれば、自費にはなるものの静脈麻酔を打つこともできます。
なお、子宮鏡検査は淋病やクラミジアなどの性感染症にかかっている状態で受けると、腹膜炎を起こす可能性があるため、性病検査で陰性を確認したうえで実施します。
ソノヒステログラフィー
子宮腔内を膨らませながら状態を確認するソノヒステログラフィーも、子宮内膜ポリープの検査方法の一つです。
子宮腔を広げるために、検査ではまずカテーテルという細い管を挿入し、そこに少量の生理食塩水を注入します。
注入後の経腟超音波検査で、子宮内膜ポリープがあれば、モニターにはっきりと映し出されます。
ソノヒステログラフィーの実施に際して、痛みはなく、検査も数分程度で終わることがほとんどです。
子宮内膜ポリープの対処法
検査を受けた結果、子宮内膜ポリープがあると判明したら、手術をはじめとする治療を受ける必要があります。
腫瘍があると診断されると、「大がかりな手術になるのかな」「治らなかったらどうしよう」と不安にさいなまれてしまうかもしれません。
ここからは、病院で一般的にとられる2つの対処法をお伝えしますので、子宮内膜ポリープが見つかり悩まれている方の参考に少しでもなれば幸いです。
方法①経過観察
無症状の場合や子宮内膜ポリープが小さい場合には、すぐには取り除かずに経過観察が選ばれるケースもあります。
経過観察中は、3~6か月に1回程度は超音波検査を、半年~1年ごとに子宮内膜生検という検査を受けます。
子宮内膜生検とは、特殊な器具によって子宮の内側の組織を採取して調べる検査のことです。
子宮内膜ポリープの大きさや形状に変化がなければ、しばらく様子を見守るのが基本です。
なんらかの変化がみられた際には、以下で説明する外科手術を受ける流れになります。
方法②外科手術
検査を受けた時点で症状が重い場合や、経過観察中に自覚症状が表れた場合などは、外科手術が選択されます。
不妊症であると診断されているケースでは、症状の解消を目的に行われることもあります。
外科手術と聞けば、痛みや入院日数について不安になってしまうのも無理はありません。
しかし、子宮内膜ポリープの摘出で行う“子宮鏡手術”は一般的な開腹手術よりも身体への負担が少なく、15~20分程度と比較的短時間で終わりますのでご安心ください。
なお、生理が終了した直後から排卵の前までは、子宮内の観察が容易になるため、この期間に手術を受けるとよいでしょう。
子宮鏡手術では、子宮鏡を子宮内に挿入し、モニターに映し出しながら子宮内膜ポリープの切除を行います。
また、子宮鏡にもいくつかの種類があり、クリニックごとに取り扱いが異なります。
以下の表に、子宮鏡手術で使用する子宮鏡の概要をまとめました。
【子宮鏡の種類】
名称 |
概要 |
レゼクトスコープ |
・単発・多発のいずれのポリープにも使用できる ・太い子宮鏡なので、全身麻酔と入院が必要になる |
細径硬性子宮鏡 |
・単発のポリープに使用する ・局所麻酔で手術を行えるので、日帰りが可能 |
シェーバーシステム |
・単発・多発のいずれのポリープにも使用できる ・局所麻酔または静脈麻酔で手術を行えるので、日帰りが可能 |
フルディスポーザブル子宮鏡 |
・単発または2~3個程度のポリープに使用する ・痛みに強い方であれば、麻酔を使用しなくても手術を行えるので、日帰りが可能 |
上記の通り、レゼクトスコープ以外の子宮鏡手術はその日のうちに帰宅することも可能なので、仕事や家事など日常生活への影響を少なくしたい方も、安心して手術に臨めます。
ただし、術後1週間程度は重い荷物を運んだり、激しい運動を行ったりするのは避けましょう。
性交渉に関しては、術後1か月程度が経過するまではお控えください。
子宮内膜ポリープに関してよくある質問
最後に、“よくある質問”にお答えしていきます。
ここまでに解説した内容も一部含みますが、子宮内膜ポリープに対する疑問や不安の解消にお役立てください。
Q1. 子宮内膜ポリープがあっても妊娠できますか?
A.子宮内膜ポリープができても、妊娠することは可能です。
しかし、子宮内膜ポリープの大きさや発生した位置次第では、受精卵の着床が阻害されるため、妊娠率が下がってしまいます。
妊娠を希望している方で、子宮内膜ポリープが発見された場合には、まずは治療を優先することが望ましいです。
Q2. 子宮内膜ポリープがある場合、性交渉は控えたほうがよいですか?
A. 子宮内膜ポリープがあっても、性交渉に差し障りはありません。
ただし、膣や子宮口に発生する“子宮頸管ポリープ”の場合は、男性器とポリープが擦れると、その際の刺激で少量の出血を伴うことがあります。
出血がある場合は性交渉を避けて、検査・手術を受けたほうがよいでしょう。
Q3. 子宮内膜ポリープがある状態で性交渉を行うと、痛みが生じますか?
A. 子宮内膜ポリープの場合、性交渉による刺激で痛みを感じることはほとんどありません。
もし、性交渉の際に痛みや出血があるのであれば、子宮頸管ポリープや子宮筋腫、子宮頸がん、子宮内膜症、子宮内膜炎など別の疾患が疑われます。
「子宮内膜ポリープがある」と診断されていても、性交渉による痛みや出血があったら、念のために改めて婦人科を受診してください。
Q4. 子宮内膜ポリープは再発しますか?
A. 子宮内膜ポリープは切除しても、再発するリスクがあります。
考えられる理由としては、子宮内膜の炎症が改善されていない場合や、切除した際にポリープの一部が残ってしまった、あるいは新たなポリープが形成された可能性が挙げられます。
再発を防ぐためにも、子宮内膜ポリープの治療後は定期的な受診が欠かせません。
Q5. 子宮内膜ポリープの治療後、生活スタイルを変える必要はありますか?
A. 大きく変える必要はないものの、規則正しい生活習慣はホルモンバランスを整えてくれるため、子宮内膜ポリープの再発防止に役立ちます。
具体的には、栄養バランスのとれた食事や、質の良い睡眠、適度な運動、健康的な体重の維持を意識しましょう。
ストレスを発散できるように、趣味を楽しんで気分をリフレッシュするのも一つの手です。
子宮内膜ポリープは妊娠の阻害因子になる可能性がある。治療を受けたうえで妊活を始めましょう
本記事では、子宮内膜ポリープが妊娠に与える影響を、不妊症との関係とともにお伝えしました。
子宮内膜ポリープができた場合、その大きさや発生した位置によっては、受精卵の着床を阻害してしまうことがあります。
ポリープを除去することで、着床率や妊娠率が高まると考えられているため、不妊症の改善も見込めます。
定期的に検診を受け、子宮内膜ポリープが発見された場合は手術で切除したのちに妊活に取り組むとよいでしょう。
検診で子宮内膜ポリープが見つかった、または不妊症に悩まれている方は、Ladies clinic LOG 原宿にご相談ください。
社会で活躍するすべての女性に寄り添えるよう、ライフスタイルに合わせた最適な治療方法をご提案いたします。
監修者
院長
清水拓哉
経歴
- 杏林大学医学部卒業
- 筑波大学附属病院初期研修
- けいゆう病院後期研修
- 横浜総合病院などで勤務した後に開業
資格
- 日本産婦人科学会専門医
- 産婦人科内視鏡技術認定医
所属学会
- 日本産婦人科学会
- 日本産婦人科内視鏡学会
- 日本子宮鏡研究会
手術実績(通算)
- 腹腔鏡手術・700件以上
- 開腹手術・150件以上
- 帝王切開・300件以上
- 分娩(経腟分娩)・1000件以上