不正出血や生理周期の乱れなどがみられる場合、子宮内膜ポリープができている可能性があります。
「生理の際に、ポリープも一緒に出てこないのかな」「自然に治ることはあるのか」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、子宮内膜ポリープは自然に取れるのか? という疑問にお答えするとともに、放置した場合のリスクもお伝えします。
女性ならではの体調の変化に不安を感じられている方は、ご一読ください。
子宮内膜ポリープとは
子宮の内側にある子宮内膜に発生する腫瘍のことを、子宮内膜ポリープといいます。
表面は滑らかで、根元に茎があり、丸いキノコのような形状をしています。
そのほとんどは良性ですが、悪性である可能性もあるため、摘出したのちに悪性の有無を検査するのが一般的です。
大きさは、数mm~数cm程度とさまざまで、個数も1つだけ発生することもあれば複数できる場合もあります。
子宮内膜ポリープの原因
正確な原因は判明していないものの、女性ホルモンであるエストロゲンの増減が、子宮内膜ポリープの発生に関係していると考えられています。
通常、子宮内膜はエストロゲンの影響を受けることで厚みを増し、生理の期間に経血とともに排出されます。
しかし、なんらかの原因でホルモンバランスが崩れ、エストロゲンの影響が強くなり過ぎると、子宮内膜の一部が必要以上に成長し、ポリープになり得るのです。
また、子宮内膜に慢性的な炎症が起こると、その刺激によってポリープができるともいわれています。
炎症が起こる要因として考えられているのは、以下の項目です。
子宮内膜に炎症を起こす要因
- 加齢
- 高血圧
- 糖尿病
- 肥満
- 喫煙習慣
- 過度なストレス
- タモキシフェンの服用
エストロゲンの減少に直結する加齢のみならず、生活習慣や過度なストレスなど、心身の健康も子宮内膜の炎症に影響します。
また、タモキシフェンは乳がんの治療に使われる薬で、エストロゲンに似た作用があるため、長期間にわたって服用すると、ポリープが発生するリスクが高まるとされています。
子宮内膜ポリープの症状
子宮内膜ポリープが発生すると、以下の症状が表れるようになります。
子宮内膜ポリープが疑われる症状
- 不正出血が続く
- 生理の期間が長くなる
- 生理痛が強くなる
- 閉経後に出血がみられる
- 経血量が増える
- 貧血が起こる
- 目まいがする
- 倦怠感がある
- 性交渉の際に痛みを感じる
- 下腹部に不快感や圧迫感がある
- 頻尿になる
これらの症状の表れ方は、子宮内膜ポリープの大きさや発生した位置などによって変わります。
また、こうした自覚症状がないまま、検診での超音波検査、あるいはほかの理由でMRI検査を受けた際に、子宮内膜ポリープが偶然発見されたというケースも少なくありません。
もし、「経血の量が明らかに多くなった」「生理痛が突然ひどくなった」といった変化を感じたら、婦人科に早めにご相談ください。
子宮内膜ポリープは自然に取れるのか?
ここまでの説明を受けて、「小さいポリープは、生理のときに勝手にはがれ落ちないのかな」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
結論からいうと、子宮内膜ポリープが自然に取れることは、基本的にないとされています。
数mm程度のものであれば、問題ない程度に小さくなっていくことがまれにあるものの、数cm以上に成長すると自然治癒する可能性はほとんどありません。
ですから、ご紹介した症状に心当たりがあれば、子宮内膜ポリープが大きくなる前に婦人科を受診して、適切な治療を受けましょう。
詳しくは以下で説明しますが、子宮内膜ポリープをそのままにしておくことによるリスクもあるため、放置するのは避けてくださいね。
子宮内膜ポリープを放置するとどうなる?
検査でポリープが発見されても無症状であれば、体調不良や痛みがないゆえに「そのままにしていても、特に問題はないだろう」と考え、放置してしまう可能性があります。
しかし、今は気になる症状がなかったとしても、時間が経つと顕在化してくるリスクがあるため注意が必要です。
ここでは、子宮内膜ポリープを放置することで発生しうる3つのリスクを紹介します。
リスク①不妊症の原因になる
子宮内膜ポリープを放置してしまうと、不妊症を発症するおそれがあります。
子宮内膜ポリープができている状態で、性交渉を行って受精卵ができても、子宮内膜ポリープが受精卵の着床を阻害してしまうと、妊娠に至りません。
妊娠が成立したとしても、流産や早産の危険性を高めてしまいます。
また、不妊治療の一環として体外受精を受ける際にも、子宮内膜ポリープがあると受精卵の着床がうまくいかないことが考えられます。
リスク②不正出血や生理の異常が続く
不正出血や生理痛の増幅、経血量の増加などの異常につながるのも、子宮内膜ポリープを放置するリスクとして挙げられます。
子宮内膜ポリープがあると、生理の期間以外に出血や、茶色がかったおりものがみられる場合があります。
その量や期間には個人差がありますが、突然発生した場合にナプキンの用意がなければ、お気に入りの洋服が汚れて、悲しい思いをしてしまうかもしれません。
ほかにも、生理の際の痛みがこれまでよりも強くなることも起こりえます。
今までほとんど生理痛を感じなかったのにもかかわらず、急に強い痛みを覚えるようになったのであれば、子宮内膜ポリープの発生を疑ってみるべきでしょう。
また、生理の際の経血量が増えることも懸念されます。
普段よりも経血量が増えることにくわえ、生理の期間が長引くことによっても、貧血を引き起こす可能性があるため、そうなれば日常生活に悪影響を及ぼしかねません。
リスク③悪性である可能性がある
前述したように子宮内膜ポリープの多くは良性ではあるものの、まれに悪性である可能性もあります。
悪性かどうかの判断は事前の検査では難しいため、切除後に組織診断を行います。
検査・診断の結果、子宮体がんや子宮肉腫といった悪性の腫瘍であると判明した場合は、ただちに治療を受けなければなりません。
進行の度合いに応じて手術や放射線治療、抗がん剤治療のなかから選択することになります。
子宮内膜ポリープは再発するのか?
子宮内膜ポリープを取り除いても、再発してしまうリスクはあります。
理由としては、子宮内膜の炎症が改善されていない場合や、切除した際にポリープが完全には除去できていなかった、新たなポリープが形成されていたなどの可能性が考えられます。
このような事態を避けるためにも、子宮内膜ポリープの治療後は定期的な検診を受けることが大切です。
また、規則正しい生活を送ることも、再発を防ぐうえでは大事なことです。
具体的には、栄養バランスのとれた食事や、十分な睡眠時間、適度な運動を心がけましょう。
できるだけストレスを溜めないように、趣味を通じてリフレッシュするのもおすすめです。
子宮内膜ポリープの検査方法
子宮内膜ポリープの検査には、いくつかの方法があります。
ここでは、代表的な3種類を紹介します。
いずれの方法であっても痛みはあまり生じないため、検査に際しての麻酔は実施しないことがほとんどです。
超音波検査
超音波検査は、子宮内膜ポリープの検査においてもっとも一般的に使用される方法です。
膣内にプローブという機器を挿入して検査を行うことで、子宮内を詳細に確認でき、ポリープがある場合は早期発見の確率が高まります。
なお、生理が終了した直後から排卵の前までは、子宮内の観察が容易になるため、この期間に検査を受けることが望ましいです。
子宮鏡検査
子宮内膜ポリープの検査は、膣内に外径の細い軟性鏡や硬性鏡を挿入して病性を確認する、子宮鏡検査によって行われることもあります。
子宮内膜ポリープがある場合は、その大きさや位置などをモニターに映し出して、正確に確認することができます。
検査の際の痛みは強くないため、麻酔を使用せずに検査を受ける方が多いものの、痛みが心配な方は静脈麻酔を打ってもらうことも可能です。
なお、子宮鏡検査は淋病やクラミジアなどの性感染症に感染している状態で受けると、腹膜炎を起こす可能性があるので、性病検査で陰性を確認したのちに実施します。
ソノヒステログラフィー
子宮腔内を広げながら状態を確認するソノヒステログラフィーも、子宮内膜ポリープの検査方法の一つです。
検査では、まず膣内にカテーテルという細い管を通し、そこに生理食塩水を注入することで子宮腔を膨らませます。
そのうえで、経腟的超音波検査を行い、子宮内膜ポリープがあればモニターに浮かび上がる仕組みです。
カテーテルを挿入したうえで生理食塩水を注入することで、子宮内をより精密に判断できるようになります。
子宮内膜ポリープの対処法
検査の結果、子宮内膜ポリープが発見された場合に気になるのはどのように治療するのかという点ですよね。
腫瘍があると聞くと、「大がかりな手術を受けないといけないのかな……」と不安に感じる方もきっと多いはずです。
ここからは、子宮内膜ポリープの対処法を2つ取り上げてお伝えしますので、参考になさってください。
方法①経過観察
子宮内膜ポリープが発見されたとしても、自覚症状がない場合や、ポリープが小さい場合には、すぐには摘出せずに経過観察となるケースもあります。
経過観察中は、3~6か月ごとに超音波検査を、半年~1年に1回程度は子宮内膜生検という検査を受けます。
子宮内膜生検は、子宮の内側の組織を採取して調べる検査です。
ただし、経過観察中にポリープの大きさや形状に変化があれば、以下で説明する外科手術を受けることになります。
方法②外科手術
経過観察中に、自覚症状がひどくなった場合や不妊症を発症した場合などは、外科手術を選択します。
外科手術と聞くと、痛みへの恐怖や不安が真っ先に頭をよぎるのは無理もありません。
しかし、子宮内膜ポリープを切除する際は、一般的な開腹手術ではなく、膣から子宮内部に小さな子宮鏡を挿入して摘出する“子宮鏡手術”を行います。
手術時間も15~20分程度と短く、開腹手術ほど身体への負担がないため、術後の経過が良好であればその日のうちに帰ることも可能です。
子宮鏡手術では、子宮鏡を子宮内に挿入し、モニターに映し出しながら子宮内膜ポリープを切除します。
子宮鏡にもいくつかの種類があり、婦人科によって取り扱っているものが異なります。
以下の表に、子宮鏡手術で用いる子宮鏡の概要をまとめました。
子宮鏡の種類
名称 |
概要 |
レゼクトスコープ |
・単発・多発のいずれのポリープにも使用できる ・太い子宮鏡なので、全身麻酔と入院が必要になる |
細径硬性子宮鏡 |
・単発のポリープに使用する ・局所麻酔で手術を行えるので、日帰りが可能 |
シェーバーシステム |
・単発・多発のいずれのポリープにも使用できる ・局所麻酔または静脈麻酔で手術を行えるので、日帰りが可能 |
フルディスポーザブル子宮鏡 |
・単発または2~3個程度のポリープに使用する ・痛みに強い方であれば、麻酔を使用しなくても手術を行えるので、日帰りが可能 |
このように、使う子宮鏡によっては日帰り手術も可能なため、仕事や家事など日常生活への影響を極力減らしたい方も、安心して手術を受けられます。
子宮内膜ポリープが自然に取れることは、基本的にない。婦人科を受診して適切な治療を受けましょう
本記事では、子宮内膜ポリープは自然に取れるのか? という疑問にお答えするとともに、放置した場合のリスクをお伝えしました。
子宮内膜ポリープができた場合、自然に取れることは基本的にありません。
不正出血や生理の異常などの自覚症状があるときはもちろん、無症状であっても不妊症を発症するほか、まれに悪性である可能性もあるので、婦人科を受診することが大切です。
検診で子宮内膜ポリープが発見された、または体調に少しでも不安を感じられている方は、Ladies clinic LOG 原宿にご相談ください。
社会で活躍するすべての女性に寄り添えるよう、ライフスタイルに合わせた最適な治療方法をご提案いたします。
監修者
院長
清水拓哉
経歴
- 杏林大学医学部卒業
- 筑波大学附属病院初期研修
- けいゆう病院後期研修
- 横浜総合病院などで勤務した後に開業
資格
- 日本産婦人科学会専門医
- 産婦人科内視鏡技術認定医
所属学会
- 日本産婦人科学会
- 日本産婦人科内視鏡学会
- 日本子宮鏡研究会
手術実績(通算)
- 腹腔鏡手術・700件以上
- 開腹手術・150件以上
- 帝王切開・300件以上
- 分娩(経腟分娩)・1000件以上