ジエノゲストは、黄体ホルモンを含む薬です。子宮内膜症や月経困難症の治療に使用されます。
副作用として不正出血やホルモンバランスの変化があるため、体重の増加を気にする方もいます。また、ジエノゲストだけでは避妊効果が得られないことにも注意しなければなりません。
この記事では、ジエノゲストによる体重増加の可能性や、妊娠のリスクについて解説します。服用中の状態と更年期の違い、リスク・副作用やピルとの違いも紹介しています。
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ジエノゲストとは
ジエノゲスト(ディナゲスト)は黄体ホルモンを含み、ピルの代わりに使用されることもある薬です。
ディナゲストは先発薬で、後発薬はジエノゲストとして販売されています。月経困難症の治療には0.5mg、子宮内膜症の治療には1mgが使用されます。
体内に長く留まる薬ではないため、1日2回の内服を継続します。体調をみながら服薬を続けて、副作用が出たときは休薬や他の薬への変更を行います。
ジエノゲストは低用量ピルと異なり卵胞ホルモンを含まないため、血栓症のリスクが低いとされています。
医師と相談し、ジエノゲストの服用を開始した場合は、2〜3か月程度継続するのが一般的です。
ジエノゲストを飲むと太る?
ジエノゲストには女性ホルモンが含まれており、体質によっては体重増加の副作用が考えられます。
一時的に体重が増える可能性はありますが、大きな問題になるほどの体重増加は報告されていません。
ジエノゲストを服用していても妊娠する可能性はある?
ジエノゲストには卵胞ホルモンが含まれていないため、低用量ピルのような避妊効果はありません。
ジエノゲストを服用中に性行為を行うと、排卵した際に妊娠することがあります。「ジエノゲストを飲み始めてから太った」と感じたときは、妊娠している可能性も含めて考慮する必要があります。
ジエノゲスト服用中の状態と更年期の違い
ジエノゲストの服用中は、ホルモンのはたらきによって卵巣機能が抑えられ、排卵が起きにくくなります。しかし、服用中でも基本的にエストロゲンは分泌されており、ゼロになるわけではありません。
更年期とは、閉経の前後5年間ずつを指す期間の名称です。この期間中は閉経に向けて卵巣の機能が急激に低下し、ホルモンの分泌量が急激に減少します。
ジエノゲストのように人工的に卵巣機能を抑制するものではなく、自然な現象としてホルモンが減っていきます。個人差はありますが、ホルモンが急激に減って「更年期障害」と呼ばれる症状が起きやすくなります。
体重増加以外でのジエノゲストのリスク・副作用
体重増加以外でも、ジエノゲストのリスク・副作用に注意が必要です。ここでは、不正出血・抑うつ・脱毛・性欲減退の副作用を詳しくみていきましょう。
不正出血
不正出血は、ジエノゲストの代表的な副作用の一つです。飲み始めてから数ヶ月は出血がありますが、少量〜中等量であれば服薬を続けて様子を見ることができます。
ジエノゲストに含まれる黄体ホルモンの作用で、子宮内膜が薄くなり、剥がれやすい状態になります。服薬を続けるかぎり内膜は薄いまま保たれるため、膜が出血とともに排出される仕組みです。
中等量以上の量が収まらない場合や、一度に多量の出血があるときには副作用が強く出ている可能性があるため、かかりつけの病院へご相談ください。
抑うつ
抑うつとは、さまざまな理由で気分が落ち込み、何もする気になれず、憂うつな気分が続くといった精神的・身体的な症状がみられる状態です。(※1)
薬を服用したことで気分が落ち込むケースもあり、ジエノゲストのようなホルモンを含む薬では、副作用として抑うつ症状が報告されています。これはジエノゲストに含まれる黄体ホルモンとそのはたらきによるもので、薬剤の添付文書にも副作用として抑うつが記載されています。
医薬品医療機器総合機構の情報によれば、「うつ病またはうつ状態の人、ならびに過去にうつ病またはうつ状態になったことがある人」は、ジエノゲストを使い始める前に医師または薬剤師に申告する必要があるとしています。
※1参照元:公益財団法人長寿科学振興財団「抑うつ」
※参照元:独立行政法人医薬品医療機器総合機構「ジエノゲスト錠 0.5mg「モチダ」」
脱毛
脱毛は、ジエノゲストの皮膚に関する副作用として、使用上の注意に記載されています。
使用上の注意では、痤瘡・かぶれ・かゆみ・皮膚乾燥と並んで脱毛が副作用として挙げられています。ただし、副作用の発現率は全体の1%未満とされています。(※)
重大な副作用としては認められていませんが、万が一脱毛の症状が現れたときはかかりつけ医に相談してください。
※参照元:一般社団法人日本医薬情報センター(JAPIC)「月経困難症治療剤 - ジエノゲスト」
性欲減退
女性ホルモンの作用により性欲が低下したり、膣の乾燥によって性交痛が生じたりすることが報告されています。
薬の作用に体が慣れるまでは一定の服用期間を経る必要がありますが、状況によっては休薬や他の薬への変更を検討することが必要です。
ジエノゲストのメリット
ジエノゲストを服用するメリットは次の4つです。
【メリット4つ】
- 偽閉経療法よりも作用が緩やか
- 副作用の発現率が低い
- ピルが服用できない方でも使える可能性がある
- 生理が止まり、子宮内膜症の症状を軽減する
卵胞ホルモンが含まれていない薬剤のため、血栓症のような強い副作用のリスクが少なく、子宮内膜症の症状を軽減するはたらきも期待できます。
偽閉経療法よりも作用が緩やか
偽閉経療法は、人工的に卵巣の機能を抑制してエストロゲンの分泌を抑える治療法です。
内服薬や皮下注射によって閉経のような状態をつくりだしますが、治療に使われる薬剤に更年期症状のような副作用があることから、マイルドに卵巣機能を抑えるジエノゲストへの切り替えも行われています。
副作用の発現率が低い
ジエノゲストの副作用には、不正出血やほてり、貧血などがありますが、重篤な状態に至ることは少なく、服薬を続けることで副作用の発現率が低減することが報告されています。
偽閉経療法の薬や低用量ピルと比較しても副作用が強くないため、血栓症のリスクや更年期症状のような副作用を少しでも和らげたい方に適している薬です。
しかし、個人差がありますので、副作用が発現する場合もあります。万が一出血や貧血があり異常を感じたら、すぐに病院へ報告してください。
ピルが服用できない方でも使える可能性がある
低用量ピルは、健康で喫煙習慣がなく、35〜40歳以下で血栓症のリスクが少ない人に限られています。
年齢や生活習慣によってピルを服用できませんが、ジエノゲストは卵胞ホルモンを含まないため、血栓症のリスクが低く、子宮や卵巣を保護する作用が期待できます。
生理が止まり、子宮内膜症の症状を軽減する
生理は、一定の周期で子宮内膜が厚くなり、剥がれ落ちるサイクルで発生する自然な変化です。
生理によって子宮や卵巣に負担がかかる可能性が指摘されています。ジエノゲストの服用により、生理や排卵が徐々に起こらなくなることで、子宮内膜症の症状を軽減することが期待されています。
ただし、不正出血の量が生理と同じやそれ以上の場合には、重大な副作用が発生していると考えられます。かかりつけ医と相談のうえ投薬や検査を行い、対策をとる必要があります。
ジエノゲストとピルの違い
ジエノゲストとピルは、どちらも女性ホルモンが含まれている薬です。
ジエノゲストは、月経困難症や子宮内膜症の治療、過多月経や月経痛の緩和に使用されます。ただし、卵胞ホルモンを含まないため、服用するだけでは避妊効果は得られません。
低用量ピルは排卵の抑制だけではなく、受精卵の子宮内膜への着床を阻止するはたらきや、精子が子宮内部に侵入しないようにするはたらきがあります。そのため、避妊効果を期待する場合は低用量ピルを服用するようにしましょう。
ジエノゲストは避妊を目的とした薬ではなく、服用中に排卵が起こると妊娠する可能性があります。
月経痛や腰痛、性交痛といった痛みの改善や子宮・卵巣にかかわる機能の抑制にのみはたらく薬であり、使用用途を確認し正しい方法で服用しましょう。
ジエノゲストの服用が向いている方
ジエノゲストは月経困難症や子宮内膜症の治療薬として使用されます。
服用に際して、異常出血や悪性腫瘍、その他の重篤な子宮や卵巣の疾患がないことが基本となりますが、服用に適しているケースは次のとおりです。
【服用に適しているケース】
- 低用量ピル以外の方法を選ぶ方
- 40歳以降〜閉経前の方
- PMSや月経痛に悩んでいる方
- 10代(思春期世代)の方
- その他(月経困難症・子宮内膜症・子宮腺筋症にともなう疼痛の改善)
年齢や体調などの理由から低用量ピルに適性がないが、重大な疾患を抱えておらず妊娠や出産の可能性もない方は、ジエノゲストの服用に適しています。
10代や40歳以上の閉経前の方でも、ジエノゲストは低用量ピルより穏やかに作用するため、服用可能です。
医師から月経困難症や子宮内膜症、子宮腺筋症にともなう疼痛の改善にジエノゲストの服用を指示された方も服用に適しています。
ジエノゲストが服用できない方
ジエノゲストは、多くの女性に適応する薬です。しかし、妊娠中や授乳中、その他の疾患がある方は服用することができません。
服用できない方 |
服用できない理由 |
妊娠中の方 |
安全性が確立されていないため |
授乳中の方 |
安全性が確立されていないため |
避妊を希望している方 |
薬に避妊の適応がないため |
妊娠を希望している方 |
薬により月経が止まるため |
妊娠している可能性がある方 |
安全性が確立されていないため |
性器出血(原因不明)がある方 |
重大な副作用のおそれがあるため |
肝臓に障害がある方 |
薬の作用が増強するおそれがあるため |
重度の貧血がある方 |
重大な副作用のおそれがあるため |
アレルギー症状がある方 |
薬への過敏症などが疑われるため |
その他医師から指示がある場合 |
医師の判断による |
医師からジエノゲスト以外の薬で治療を指示される場合もあります。検査・診断のうえ、体に合う薬を選択するようにしてください。
ジエノゲストと併用できないお薬
ジエノゲストは市販の痛み止めやアレルギーの薬などとは併用できますが、有効性が弱まる飲み合わせの良くない薬もあります。(※)
併用できない薬 |
種類 |
抗菌薬 |
エリスロマイシン・リファンピシン等 |
抗てんかん薬 |
フェニトイン・フェノバルビタール等 |
ホルモン剤 |
卵胞ホルモン・黄体ホルモンを含む薬 |
CYP3A4誘導薬 |
リファンピシン・フェニトイン・カルバマゼピン等 |
抗てんかん薬のように、中枢神経系に作用する薬などは薬の作用が増強するおそれがあります。また、CYP3A4誘導薬は血中濃度が低下し、有効性が弱まるおそれがあります。
ジエノゲストは黄体ホルモンを含むため、同種の薬や卵胞ホルモンを含む薬との併用は避ける必要があります。
詳しい飲み合わせや疑問については、かかりつけの病院で医師や薬剤師とご相談ください。
※参照元:公益財団法人日本医療機能評価機構「No.2 - 共有すべき事例」
ジエノゲストの服用をやめるタイミング
ジエノゲストの服用をやめるタイミングとして、「医師からの指示」「妊娠を希望する場合」の2つが挙げられます。
一例として、ジエノゲストの服用による副作用や体調不良があったとき、治療方法を変更するときに医師から服用を中断するように指示があります。
また、妊娠を希望するときも事前に申し出たうえで休薬し、適切なタイミングで妊活を開始します。
ジエノゲストは多くの女性に適性がある
今回は、ジエノゲストの服用によって太ったり妊娠したりする可能性と飲み合わせの注意点について紹介しました。
薬にはそれぞれ目的や適性があり、目的以外に使用しないように注意が必要です。
「排卵を抑えるから妊娠しない」と思っていても、排卵が起こる可能性があるため、確実に避妊するには低用量ピルの使用が推奨されます。
また、体重増加や脱毛、その他の副作用が発生したときは、早めにかかりつけ医にご相談ください。