ジエノゲスト(ディナゲスト)は、女性特有の疾患である子宮内膜症や月経困難症の治療に使われる薬です。
ディナゲストと呼ばれる薬が先発薬として発売され、2022年に後発薬のジエノゲストが発売開始されました。
どちらも黄体ホルモンを含む同一の薬で、子宮内膜の増殖を抑える作用があるとされており、医師の判断のもと、月経困難症や子宮内膜症の治療に用いられます。
この記事では、ジエノゲストの服用で起こりやすい「不正出血」について、どのようなトラブルなのか詳しく紹介します。不正出血の目安や予防方法も取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
ジエノゲスト服用で起こりえる不正出血とは
ジエノゲストの服用で起こりやすいとされている「不正出血」は、月経があるタイミング以外で性器から出血することです。
このトラブルは次のような原因が考えられます。
【原因】
- 子宮の病気
- 異常妊娠
- ホルモンバランスの乱れ
- 排卵期の出血
- 薬の服用
不正出血は、排卵期に卵胞ホルモンの分泌が一時的に低下して発生するものから、子宮筋腫や膣炎、異常妊娠といった疾患の症状として現れるものまで、さまざまな原因が考えられます。
排卵期にのみ軽い不正出血が起きるケースでは異常はみられませんが、それ以外のタイミングでの不正出血や量が多い場合はすぐに婦人科を受診してください。
ジエノゲスト錠は、排卵を抑え、子宮内膜を薄くする作用を持つ薬です。内膜が剥がれやすくなるため、0.5mgを服用していても不正出血が起こる可能性があります。
0.5mgまたは1mgを継続的に服用しても、不正出血が止まらない場合や、明らかに異常な量の出血がある場合は、かかりつけの病院に相談してください。
ジエノゲスト0.5mgを服用した場合の不正出血の目安
0.5mgを服用した場合、次のような不正出血がみられることがありますが、出血の程度には個人差があります。
不正出血の量 |
詳細 |
少量 |
点状に出血がみられるが少量にとどまる |
少〜中等量 |
おりものシートで足りる程度の量 |
多量 |
月経のような出血がありナプキンが必要な量 |
少量から中等量までは、平均的または時折見られる範囲ですが、中等量を超え、ナプキンが必要なほどの出血がある場合は注意が必要です。
不正出血としては明らかに量が多く、一度に多量の出血があるようなケースでも、かかりつけの医師に連絡してください。
ジエノゲスト(ディナゲスト)錠の販売元である持田製薬株式会社によれば、出血が続いたときに服用を中止すると、多くの場合1〜2週間で出血が止まります。(※)
ただし、中等量以上の出血にともなって自覚症状として貧血が発生したり、貧血が長期にわたり進行したりするケースもあるため、出血量が少ないからといってそのままにせず、出血自体が長引いているときも医師や薬剤師に相談してください。
※参照元:持田製薬株式会社「不正性器出血について」
不正出血を防ぐ方法
不正出血の量には個人差があり、少量から月経時と同程度の出血までさまざまです。そのため、少量程度であれば服用を続けて様子をみながら出血量を確認します。
通常、ジエノゲストは飲み続けると一般的に少しずつ出血量が収まっていきますが、個人差があります。量が減らない場合や多量の出血がある場合は医師に相談し、服用を止めることがあります。
ジエノゲストの服用を中止し、他の治療法に切り替えることで、不正出血の経過が変化する場合があります。治療法の変更については医師に相談してください。
また、服用される方自身でも飲み忘れや服用時間のずれを調節し、正しい時間に服用する習慣をつけることが大切です。
ジエノゲストは1日2回、約12時間おきに服用します。飲み忘れや一度に2錠の服用で不正出血が見られることがあるため、飲み方に注意が必要です。
1回程度の飲み忘れは、多少時間がずれていても気付いたタイミングで服用することが推奨されていますが、2回以上の飲み忘れは1錠だけ服用するようにしてください。
不正出血が続く場合の治療法
不正出血が続く場合の治療法として、休薬や止血剤・鉄剤の服用、子宮の検査などが行われます。
長期間出血が続く場合は、ジエノゲストを数日間休薬し、子宮内膜が完全に剥がれるよう調整する方法がとられます。多量の出血には止血剤のほか、漢方薬・鉄剤を併用するケースもあります。
薬による対応でも出血がみられる場合は、子宮頚部・体部の検査を行い、子宮頚がんや子宮体がんの有無を調べます。服用される方の年齢・既往症・体調・薬との相性・他の薬との飲み合わせによって対処方法が異なるため、詳しくはかかりつけの病院へご相談ください。
ジエノゲスト服用時の注意点
ジエノゲストは、医師や薬剤師の指示に従い、用法・用量を守って服用しましょう。
また、1日2回の服用を忘れないこと、妊娠を希望しない場合はコンドームを使用して避妊することが重要です。
2つの注意点については医師からも指示を受けますが、ここから詳しくみていきましょう。
1日2回の内服を忘れない
ジエノゲストは比較的短時間で体外に排出される薬のため、1日に2回服用する必要があります。
一度に2錠服用すると、不正出血の量が増え、貧血・低エストロゲン症状・精神的な不調といった副作用が現れる可能性があります。必ず1回1錠ずつ、1日2回に分けて服用してください。
服用し忘れたときは、気づいたタイミングで1錠だけ服用します。ただし、1回目をスキップして2回目の服用時間が近づいているときは、1回目の分は飲まずに2回目の分だけを飲みます。
一定の時間をあけずに2錠を服用しないように注意してください。また、0.5mgでも2錠まとめて飲んでしまうと副作用が強く出るおそれがあるため、飲み方を注意して服用しましょう。
妊娠を希望しない場合はコンドームで避妊する
ジエノゲスト(ディナゲスト)は、避妊効果をもたらす薬ではありません。低用量ピルのように避妊効果がある薬ではないため、避妊目的で服用しないように注意が必要です。
内服によって排卵が抑制され、低エストロゲン状態となりますが、まれに排卵が起こり妊娠するケースが報告されています。ジエノゲストを服用しつつ避妊する方法の一つとして、男性側の協力のもとコンドームによる避妊を行うことがあげられます。
また、妊娠以外では性感染症の予防にもコンドームは効果的です。ジエノゲストでは性感染症が防げないため、本来の治療目的のみにジエノゲストを服用するようにしてください。
大量の不正出血がある場合は医師に相談する
月経時と同量、またはそれ以上の不正出血がある場合は、すぐにかかりつけの病院で医師や薬剤師に相談しましょう。
「月経時の経血量があまり多くないのに、ジエノゲストを服用したらそれを上回る出血がある」「量自体は多くないが何日も同量の出血が続いており貧血気味になってきた」といった、通常とは異なる状況についても、医師に報告のうえ指示を受けてください。
ジエノゲスト0.5mgと1mgの違い
ジエノゲスト0.5mgと1mgは、どちらも黄体ホルモンを含む薬です。1mgは0.5mgの2倍の量が含まれているため、0.5mgでは効果が薄い場合に服用を検討します。
0.5mgと1mgの詳しい使用用途をみていきましょう。
0.5mgの特徴
ジエノゲスト0.5mg錠は、月経困難症の治療や低用量ピルからの切り替え、10代の未成年者などに使われる薬です。
1mgよりもホルモンの含有量が少ないため、副作用のリスクを抑えたい方や体調に合わせて処方されます。
ホルモンの含有量は少なくても、痛みの軽減効果が期待でき、子宮や卵巣を保護する目的で服用されます。
体調や副作用の状況を見ながら、1mgに切り替えることもあります。詳しくはかかりつけの病院で医師や薬剤師に相談し、治療方法を検討してください。
1mgの特徴
ジエノゲスト1mg錠は、0.5mgよりもホルモンの含有量が多いため、子宮内膜症や子宮腺筋症に伴う疼痛の改善に使われている薬です。
0.5mg錠からの切り替えとして使われるほか、子宮や卵巣のはたらきを確実に抑える必要があるときに処方されます。
偽閉経療法のように薬の効果が強く出る可能性のある治療が体に合わなかった方に対しても用いられ、1mg錠に切り替えて様子を見ることがあります。
偽閉経療法に比べて骨密度の低下が少ないため、長期間の服用にも適した薬です。
ジエノゲスト0.5mgと低用量ピルの違い
ジエノゲスト0.5mgと低用量ピルの違いは、卵胞ホルモン(エストロゲン)が含まれているかどうかです。
ジエノゲストは黄体ホルモン(プロゲステロン)のみ含んでおり、エストロゲンは含まれていません。低用量ピルにはどちらのホルモンも含まれています。
低用量ピルには2種類のホルモンが含まれているため、避妊効果が期待できます。一方、ジエノゲストは黄体ホルモンのみを含むため、避妊目的では使用できません。
ジエノゲストの料金
ジエノゲスト0.5mgの薬価は、1錠あたり45.9円です。月経困難症と診断された場合は保険適用となる可能性があり、一般的に料金は月に770円程度となります。
1mgの薬価は、1錠あたり約62〜64.5円です。子宮内膜症や子宮腺筋症に伴う疼痛の改善に使われる場合は保険適用の薬剤となる可能性があり、一般的に料金は月に1,040円程度となります。
自己負担額は医療機関や保険の適用条件によって異なるため、詳細は医療機関にご確認ください。
薬代とは別に、初診料や再診料、検査費用などがかかります。保険適用になる場合は、診断のうえ健康保険の負担割合に応じて1〜3割を負担します。
※先発品のディナゲスト錠は0.5mgが104.4円、1mgは124.2円です。
※参照元:KEGG MEDICUS「商品一覧 : ジエノゲスト」
ジエノゲスト0.5mgによる副作用はかかりつけ医へ相談を
今回は、ジエノゲストの服用による不正出血について、原因や出血量の目安、服用時の注意点を紹介しました。
不正出血は、ジエノゲストの服用に関係なく排卵期に起こることもあります。そのため、服用のタイミングや体調を確認し、出血量や副作用の有無をチェックしましょう。
副作用や服用時の注意点は事前に医師や薬剤師から指導されますが、服用や体調について不安がある場合は、かかりつけの病院に相談しましょう。