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妊娠中にLSIL・ASC-USと判断された場合のリスクと対応方法

女性特有の疾患への不安がある方に向けて、妊娠中にLSILやASC-USと判断されたときの対応方法について解説します。

妊娠は女性にとって人生の一大イベントです。もし妊娠中に「LSIL」「ASC-US」と判断されれば、「がんでは?」と不安になられるでしょう。分娩ができるのか、赤ちゃんはどうなるのか、と心に余裕を持てなくなってしまう方も少なくありません。

そこで今回の記事では、妊娠中にLSIL・ASC-USと判断された場合の対処法やリスクの高さについて解説します。
参考にしていただければ、ご自身がどのような状態におかれているのか判断しやすくなるはずです。

子宮頚がん検査で異常細胞が見つかったときの対応

がん検査で異常細胞が見つかった場合、どのように対応するべきか見ていきましょう。結果の分類別でご紹介します。

ケース1:ASC-USだった場合

ASC-US」と判断された場合、がんのリスクを判定する検査が行われます
ASC-USではHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染している可能性が高い状態です。HPVの中には、がんに進展するリスクが高いタイプがいます。
どれほどリスクが高いかを判定するための検査が「ハイリスクHPV検査」です。

低リスクなら妊娠中にASC-USと判断された場合も、通常通りの管理となります。リスクが高いと判定された場合は、コルポスコピーや組織診を実施して経過観察を行うのが基本です。ただしASC-USで軽い細胞変異から中度細胞変異なら、ほとんどの場合で通常通りの分娩を目指せますし、妊娠希望の方にとっても問題がありません。

関連記事:ASC-USとは?ASC-USの原因や子宮頸がんとの関連について

ケース2:LSIL、HSIL、ASC-Hだった場合

妊娠中に「LSIL」「HSIL」「ASC-H」と判断されたなら、コルポスコピーと組織診を実施します。
ASC-USと判断されたときと同様に、軽い細胞変異から中等度細胞変異なら経過観察とし、通常通りの分娩が行えるでしょう。

もし細胞の形状変化がかなり高度であるとされたなら、高次施設を紹介され、治療が開始されるかもしれません。

関連記事:LSILとは?LSILと言われたら?精密検査をする理由と癌の確率

ケース3:HSIL、SCC、腺細胞異常だった場合

「HSIL」「SCC」「腺細胞異常」の場合は、すぐに高次施設への紹介状が書かれるでしょう。
手術が必要となれば、妊娠14~15週のころに行われるのが理想だとされるためです。高次施設を紹介されたら、できる限り早めに受診してください。

子宮頚がんの罹患年齢

子宮頸がんに罹患しやすい年齢は、近年になって若年化していると報告されています。2019年のデータによると、35~39歳が最も罹患率が高く約27%です。そして45~49歳の約28%をピークとして、年齢を経るごとに罹患率が低くなっていく傾向です。

出典:国立がん研究センター:(PDF)知ってくださいヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸がんのこと

1985年には70~84歳、2000年には75歳以上で罹患率のピークを迎えていた子宮頸がん。しかし最近では、若い方の罹患率が高くなってきているのが現状です。

子宮頚がんの分類

がん検診には「ベセスダ分類」と呼ばれる分類があります。分類によってリスクのレベルや状況が変わるため、妊娠中にLSILやASC-USと判断されたなら、次の分類について知っておきましょう。

 

ベセスダ分類

クラス分類

概要

扁平上皮系

NILM

Class I

Class II

異常なし、炎症あり、要定期検診

ASC-US

Class II

Class IIIa

軽い病変の疑いあり、要HPV検査もしくは細胞診再検

ASC-H

Class IIIa

Class IIIb

病変の疑いあり、要コルポもしくは生検

LSIL

Class IIIa

軽度異形成、HPV感染、要コルポもしくは生検

HSIL

Class IIIa

Class IIIb

Class IV

中等度異形成、高度異形成、上皮内がん、要コルポもしくは生検

SCC

Class V

扁平上皮がん、要コルポもしくは生検

腺細胞系

AGC

Class III

腺異型もしくは腺がんの疑い、要コルポ、生検、頸管、内膜細胞診、組織診

AIS

Class IV

上皮内腺がん、要コルポ、生検、頸管、内膜細胞診、組織診

Adenocarcinoma

Class V

腺がん、要コルポ、生検、頸管、内膜細胞診、組織診

other malig

Class V

その他の悪性腫瘍、要病変検索検査

割合としては扁平上皮がんの方が多く、LSIL、HSILでは軽度から高度の細胞変異が見られるレベルです。
SCC、AGC、AISではがんが疑われ、Adenocarcinomaでは浸潤線がんと判断されます。

NILMやASC-USではより詳しい検査が不要であることが多く、妊娠中でも過度な不安は不要でしょう。

HPVとは

HPVとは「ヒトパピローマウイルス」の略称で、がんの原因となるウイルスです。性交渉を行ったことがある女性であれば、一生涯に一度は感染するとされます

免疫細胞によって排出されますし、2年ほどの感染を経て消滅することがほとんどです。しかしまれに、2年以上にわたって感染を継続させることがあり、感染が長期化した場合に細胞の形状が変わることがあります。しかし軽い形状の変化であれば、自然に治ることも珍しくありません。

そのためHPV感染が見られてより詳しい検査が必要となったとしても、必ずしもがんではないことを知っておきましょう。
妊娠中にHPV感染が認められてLSILだと判断されても、そのまま軽快するかもしれません。

関連ページ:HPVについて

HPVワクチンの種類と有用性

HPVにはワクチンがあり、一定の割合で感染を防げます。ワクチンを3回接種すると20~30年の有効性が維持できると報告されています。
ワクチンには2価と4価、9価の3種類があり、次のようにそれぞれ防げるHPVの種類が異なります。

【ワクチンの種類と防げるHPVタイプ[1]】

  • 2価・4価:16型、18型
  • 9価:16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型

2価と4価のワクチンは50~70%の予防率であるとされますが、9価だとさらに高くなり、80~90%とされています[1]。

ちなみに2回接種では高い効果が望めませんので、3回の接種が理想です。
HPVはがんの原因となり得るため、予防のためにはワクチンを摂取するのが効果的でしょう。

関連ページ:子宮頸がんワクチンについてはこちら

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精密検査の流れ

妊娠中にLSILやASC-USと判断された場合、より詳しい検査が必要となることがあります。
もしものときのために、検査の流れについて知っておきましょう。

【精密検査の流れ】

  1. ウイルス感染有無の検査を受ける
  2. コルポスコピー検査もしくは生検を受ける
  3. 結果によってその後の対応を判断する

がん検査においてより詳しい検査が必要とされた場合は、まずウイルスに感染しているかどうかの検査を受けます。
そして必要があればコルポスコピー検査や生検を受ける流れです。
最終的に出された結果によって、その後の対応を判断し、治療が開始されることもあるかもしれません。

もちろん検査の結果次第でより詳しい検査の流れは異なります。
妊娠中のLSILやASC-USではリスクが少ないと考えられますが、医師から告げられた検査を必ず実施するようにしてください。

■関連ページ

妊娠中のLSILとASC-USの判断には正しい対応を

いかがでしたでしょうか?この記事を読んでいただくことで妊娠中のLSILとASC-USの判断への対応についてご理解いただけたと思います。

LSILとASC-USはいずれもがんのリスクが少ないものの、異常があるかもしれないとの判断です。
もしより詳しい検査が必要となったなら、できる限り早めに検査を受けるようにしてください。

Ladies clinic LOG 原宿では女性の健康を守ることをモットーとしており、妊婦健診やがん検診、ワクチン接種も提供しています。
もし妊娠中にLSILやASC-USと判断されたなら、適切に対応するために早めに専門医へ相談しましょう。

▼ご予約はこちらから

[1]参照:厚生労働省:HPVワクチンに関するQ&A

監修者

院長

清水拓哉

経歴

  • 杏林大学医学部卒業
  • 筑波大学附属病院初期研修
  • けいゆう病院後期研修
  • 横浜総合病院などで勤務した後に開業

資格

  • 日本産婦人科学会専門医
  • 産婦人科内視鏡技術認定医

所属学会

  • 日本産婦人科学会
  • 日本産婦人科内視鏡学会
  • 日本子宮鏡研究会

手術実績(通算)

  • 腹腔鏡手術・700件以上
  • 開腹手術・150件以上
  • 帝王切開・300件以上
  • 分娩(経腟分娩)・1000件以上
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