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ASC-H(アスクハイ)とは?検査と治療の方法を解説

20歳以上の女性には、2年に1回子宮頸がん検診の受診が推奨されています。
検診後の結果を見て、「ASC-Hと診断されたけど、なんのことかよくわからない」「どんな症状が表れるの?」と不安に感じている方もいらっしゃるでしょう。

そこで本記事では、ASC-Hの概要をお伝えしたうえで、検査と治療の方法についても解説します。
ご自身の身体がどのような状態にあるのかをきちんと理解して、適切に対処するためにぜひ参考にしてください。

ASC-H(アスクハイ)とは?

子宮頸部の表面の組織において、中等度異形成(CIN2)あるいは高度異形成・上皮内がん(CIN3)の可能性がある状態を、ASC-H(アスクハイ)といいます。
これは、“子宮頸部異形成(CIN)”の症状がみられ、“高度扁平上皮内病変(HSIL)”の疑いがあるということです。

聞き慣れない単語が多くなりましたが、ASC-Hを完璧に理解しようとなると少々複雑なので、順を追って説明します。

まず子宮頸部異形成とは、子宮頸部において“現状ではがんとはいえないが、がんに進行する可能性が高い状態”、または“悪性と良性の境界にある状態”のことです。
この異形成には3つの段階があり、病変の程度によってCIN1~3に分けられます。
詳細は、以下の表をご確認ください。

病変の程度による異形成の分類

異形成の分類

状態

軽度異形成(CIN1

異形成が子宮頸部上皮の下1/3以内にとどまっている

中等度異形成(CIN2

異形成が子宮頸部上皮の下2/3以内にとどまっている

高度異形成~上皮内がん(CIN3

異形成が子宮頸部上皮の2/3からすべての層に及んでいる

上記の表を踏まえて、CIN2あるいはCIN3に該当する場合は、高度扁平上皮内病変と診断されます。
高度扁平上皮内病変は、子宮頸部異形成のなかでも中等度以上の症状を指します。

「CIN2かCIN3に当てはまるならASC-Hじゃないの?」と疑問に思われるかもしれませんが、これは正しくありません。
なぜなら、中等度以上の子宮頸部異形成がはっきりと認められたときのみ、高度扁平上皮内病変と診断されるからです。

要するにASC-Hとは、“高度扁平上皮内病変とは言い切れず、あくまでもその疑いがある状態”ということです。

がんになる確率

では、子宮頸部異形成に起因するASC-Hから、がんになる確率はどの程度あるのでしょうか。

ASC-Hから高度扁平上皮内病変に移行した場合、約15~20%の方が早期がんを発症するといわれています。
軽度異形成や中等度異形成は、ご自身の免疫力によって自然と癒える傾向にあるので、定期的に検査を受けながら医師が経過を観察します。
しかし一部の方は、高度異形成まで症状が進む可能性があり、上皮内がんや子宮頸がんを発症するケースがあるのです。

ASC-Hは高度扁平上皮内病変への移行、ひいてはがんになる可能性もゼロではないため、万が一の際に早期発見できるよう定期的な検診を心がけましょう。

子宮頸部異形成の原因

ASC-Hと診断されるもととなる子宮頸部異形成の原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染です。
このウイルスは、主に性交渉により感染するといわれています。

先述した通り、ヒトパピローマウイルスに感染しても、人体の免疫力によって自然治癒することがほとんどです。
しかし、なかには悪性化する可能性の高い“高リスク型HPV”といわれるウイルスもあるので、油断は禁物です。
高リスク型HPVに感染して自然治癒できなかった場合や、自然治癒しても感染を繰り返してしまった場合は、子宮頸部異形成から子宮頸がんへと進行する可能性があります。

なお、一部の医療機関では、HPVへの感染予防のワクチンを接種できるので、受診の際にはご検討ください。

子宮頚部異形成の症状

子宮頸部異形成を発症しても、初期症状や自覚症状はありません。

ただし、症状がないからといって、定期健診を受けずに長期間放置すると、子宮頸部異形成が無自覚のうちに進行してしまうことも考えられます。
HPVが自然消失していなかった場合、数年から10年程度の期間を経て子宮頸がんに進展するケースもあります。

また、まれに不正出血がみられますが、その場合は症状が進行している可能性が高いので、早急に医師に相談しましょう。

気づかぬうちに発症する子宮頸部異形成は、子宮頸がん検診で初めて認められることがほとんどだといわれています。
裏を返せば検診以外では発見できないということなので、自覚症状がないからこそ、医療機関での定期的な受診が欠かせないのです。

ASC-Hの検査方法

ASC-Hと深い関係にある子宮頸部異形成が発症する原因と、その症状については理解できましたでしょうか。
ここからは、ASC-Hの検査方法をお伝えします。

デリケートな部分の検査になるので、少しでも不安を軽減できるよう、検査方法や手順をよく理解しておきましょう。

コルポスコピー検査

コルポスコピー検査とは、“コルポスコープ”といわれる顕微鏡の一種を用いて、子宮頸部や膣内を観察する精密検査のことです。
この顕微鏡によって、6~40倍に拡大して子宮頸部の様子を観察すれば、肉眼では見つけられない病変を発見できます。

では、実際の検査はどういった手順で行われるのでしょうか。
受診する医療機関によって多少異なりますが、コルポスコピー検査のおおまかな手順は以下の通りです。

コルポスコピー検査の手順

  1. 内診台にあがり、検診時と同じ体勢をとる
  2. 膣を開く器具(膣鏡)をつけて、子宮頸部が見えるようにする
  3. 膣鏡をつけたのち、子宮頸部に薄めた酢酸を塗布して色の変化を観察する
  4. 観察したあと、異常がみられる箇所から組織を採取する

上記の膣鏡をつける際、子宮頸部の向きや大きさによって医師から患部が見えにくい場合は、膣鏡をさらに開く必要があるため痛みを伴う可能性があります。

また薄めた酢酸を塗ることで、子宮頸部の病気の部分が変色し、広がりや進行具合を観察できるようになります。
一部の医療機関では、疑わしい箇所をコルポカメラといわれるカメラで撮影する場合があるので、あらかじめ承知しておいてください。

ここで異常がみられる場合には組織を採取するわけですが、この検査については次項で解説します。

コルポ生検

コルポスコピー検査で組織に異常が見受けられた場合、その組織を少量採取して検査を行い、診断を確定させる精密検査をコルポ生検といいます。
コルポ生検では、採取した組織を顕微鏡で観察することで、子宮頸部異形成や子宮頸がんの診断が可能です。
この検査の結果が出るには、おおよそ2週間かかります。

組織の採取と聞くと、怖そうなイメージを抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、心配は無用です。
所要時間は1~2分程度で済みますし、採取するサイズは米粒ほどの大きさなので、耐えられないような痛みを伴うことはありません。
本来は麻酔なしで検査をしますが、もし心配なら担当の医師に相談してみるのも一案です。

とはいえ、子宮頸部はわずかな刺激でも出血してしまう可能性があるので、採取後はしばらく圧迫して止血する必要があります。
止血の方法は各医療機関によっても異なりますが、あとから除去可能な綿球を膣内に入れて、帰宅後にご自身で取り除いていただくことがほとんどです。

ここまでが、ASC-Hと診断された方が受ける検査の一連の流れになります。
過度に怖がらずに、重要性を理解したうえで検査に臨みましょう。

ASC-Hの治療方法

ASC-Hの検査方法を押さえたところで、ここからは治療方法についてもお伝えします。

万が一症状が進行してしまった場合には治療が必要になるので、その方法もあらかじめ把握しておくと安心です。

自然治癒

ASC-Hと診断された場合、子宮頸がんにすぐに移行するわけではないため特別な治療は行わず、検査のうえ経過観察します。
ご自身の免疫力によって自然治癒することが多いので、このような措置がとられているわけです。

ただし、完全に治るまでには数年を要する場合があり、症状が慢性化してしまうと子宮頸がんにつながる可能性がないとは言い切れません。
定期的に検査を受けて、ご自身の身体の状況をきちんと把握しておくことが重要です。

子宮頸部円錐切除術

ASC-Hと診断され、その後の検査で子宮頸部異形成と認められて高度扁平上皮内病変への移行がみられる場合、子宮頸部円錐切除術を受ける必要があります。
具体的には、長期間にわたってヒトパピローマウイルスに感染していて、中等度異形成(CIN2)あるいは高度異形成(CIN3)に至っている方が対象です。

この手術では、電気メスやレーザーを用いて患部を円錐状に切除します。
切除した部分の病理検査を実施することで詳細な診断が可能になり、除去しきれなかった病気が残っていないかどうかも確認できるのです。

これにより、高度扁平上皮内病変の症状を緩和し、ひいては子宮頸がんへの進行を防ぐことにもつながります。

なお、子宮頸部円錐切除術は全身麻酔で行うため、手術中に痛みは感じませんのでご安心ください。

ASC-Hとは子宮頸部異形成の症状がみられ、高度扁平上皮内病変の疑いがある状態のこと

今回は、ASC-Hの概要を、検査と治療の方法とともにお伝えしました。

ASC-Hとは、子宮頸部の表面の組織に中等度異形成(CIN2)あるいは高度異形成・上皮内がん(CIN3)の可能性がある状態のことをいいます。
つまり子宮頸部異形成の症状が認められ、高度扁平上皮内病変の疑いがある状態です。

自然治癒するケースが多いとはいえ、定期的な検査でご自身の身体の状態を把握し、必要に応じて治療を受けることで症状の解消に期待できます。

ASC-Hと診断されて精密検査を検討している方は、コルポスコピー検査や子宮頸部円錐切除術にも対応しているLadies clinic LOG 原宿に、ぜひご相談ください。
社会で活躍する女性に寄り添い、ホスピタリティあふれるサポートをお約束いたします。

監修者

院長

清水拓哉

経歴

  • 杏林大学医学部卒業
  • 筑波大学附属病院初期研修
  • けいゆう病院後期研修
  • 横浜総合病院などで勤務した後に開業

資格

  • 日本産婦人科学会専門医
  • 産婦人科内視鏡技術認定医

所属学会

  • 日本産婦人科学会
  • 日本産婦人科内視鏡学会
  • 日本子宮鏡研究会

手術実績(通算)

  • 腹腔鏡手術・700件以上
  • 開腹手術・150件以上
  • 帝王切開・300件以上
  • 分娩(経腟分娩)・1000件以上
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